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月刊読んだ本【2024.10】


楽園の夕べ

 ルシア・ベルリン/岸本佐知子 訳 (講談社)

 荒野に朽ちかけた小屋がある。そこで拾い上げた白黒の写真について語っている。そんな情景が浮かぶ。でもフレームの外のことはフィクションなんだ。『妻たち』の会話を隣でお酒飲みながらずっと聞いていたい。アル中の人は考えすぎてしまうからという言葉に頷いてしまう。僕もそれを言い訳にしてお酒を飲む。あと「いい人」というのは退屈な男という意味、というのも納得しかない。他にも名言はあるし、物語のひとつひとつはどこかで起こった出来事で、今もどこかで起こっていることかもしれない。
 本書に出てくる音楽を聴きながら、本書に出てくるお酒を飲みながら読んだ。ジョン・コルトレーン、チェット・ベイカー、セロニアス・モンク。そしてジャックダニエル。つまりいつもどおりの僕の生活だった。ということは、僕の人生も彼女に書かれているのかもしれない。その一部分を切り取った作品たち。写真の中にしか僕の人生はないかもしれない。でもそのフレームの外を生きてみたい。そこにはどんな情景も描くことができる。だからフィクションを読む。

ニュートン式超図解 最強の面白い!! 天気

 荒木健太郎 監修 (ニュートンプレス)

 興味深くて面白いけれど、難しい。漠然と天気予報を受け取っているけれど、その裏には様々な理論が隠れているのだと感動する。日本の天気は近隣の大気の状態を知ったり調べたりするだけではなくて、地球規模で考えないと説明ができないというのが興味深い。
 ラジオのニュースを聴いて天気記号を用いて地図に書き込むというのを子供の頃に授業でしたけれど、その天気記号が日本式のもので国際式のものがあるとは知らなかった。

マリアビートル

 伊坂幸太郎 (角川文庫)

 前作は、前回仙台に行ったときに読んだ。なので今作も仙台に行くからと読んだ。舞台は東北新幹線なので、東北新幹線内で読むのにうってつけだった。トーマスの説明文を暗記しているの、狂気があってよい。殺伐とした話なのにコメディタッチで読みやすい。運が悪いという能力(?)、とてもよい。新幹線の車内でこんな事が起こるなんて現実的じゃないけど、そんなことに突っ込んではいけない。
 ロシア文学の話とかが少し出てきて、作者の読書遍歴が気になった。
 また仙台に行くときに3作目を読みます。

おもしろサイエンス 温泉の科学

 西川有司 (日刊工業新聞社)

 文章が読みにくい。もっと、「しかし」とか「そして」とか「あるいは」とか「また」とか「一方〜では」とかを使ってくれ。あと、平成の大合併で地名が変わっているのに、旧自治体名で書いてある箇所があって、いまそんな町なくない? て戸惑う。編集者的なのいないの? ちゃんとチェックしてから出版してほしい。古い媒体で連載していたものをそのまま掲載しているのならわかるけど、そんなこと書いていない。
 それはともかく、日本にはたくさんの温泉があることがわかったし、世界の温泉のことを知れてよかった。火山型と地層型がある事も知った。汲み上げすぎて枯渇したり、地震で湧出が止まったりと、現在ある温泉資源は永続的なものではないので、行けるうちに行ける場所に行ったほうがいい。そして色んな種類の温泉に入りたい。

冬の夜ひとりの旅人が

 イタロ・カルヴィーノ/脇功 訳 (白水Uブックス)

「あなた」がどうしたとか二人称を用いた作品はどうしても共感できないなと思う。小説の続きが気になってそれを探すという内容で、帯に書いてある通りの読書をめぐる冒険だった。
 いくつもの断片的なお話が連なるのに、一つの作品を読んだ感覚もある。それぞれの物語の続きは読者が勝手に考えればいいのであって、その姿勢は共感できる。
 ついったーの、存在しない漫画のコマを描いている人みたいだと少し思う。断片的な小説を何度も読まされるので。

マクベス

 シェイクスピア/福田恒存 訳 (新潮文庫)

 悪魔的なものにそそのかされて自ら手を染めるマクベスは、陰謀論にハマってしまった憐れな男に思える。そして運命に翻弄されていく。自分は弄ばれていると気付かぬうちに。「人の生涯は動きまわる影にすぎぬ」と自分で言っているように、彼は運命に操られたマリオネットなのかもしれない。それは我々にも当てはまるだろうか。そしてマクベスは劇中のキャラクタなので、メタ的な意味で自分は役者だと気づいてしまったのかもしれない。それから魔女の預言をあまりにも気にしすぎである。そんなことハナから気にかけなければ悲劇にならずにすんだのに。

課題図書【中学校の部】

 上記記事に文字数の都合で書ききれなかった感想等をここに書く、と言いたいところだけれど特にない。
『希望のひとしずく』は11月に読んだけど、まとめてこっちに入れました。

参考楽曲▽

ひとこと

 旅の計画を立てていたからあまり本を読めなかった。


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縁川央
もっと本が読みたい。

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