モンパチにみるバンドの儚さ〜MONGOL800 -message-を見て〜

モンゴル800が「MESSAGE」でブレイクしたのが2001年。当時、高校でバンド活動をしていた私は、モンパチのことを数ある青春パンクバンドの一つとして捉えていて、自分にとっての音楽ではないような気がしていた。ただ、あの若さでブレイクしたことは凄いなと思ったし、それにしては随分インディペンデントな姿勢を貫いていた事には好感を抱いていたと思う。

その後しばらくモンパチの音楽に触れることも無かったが、2006年にリリースされた4枚目のアルバム「Daniel」のツアー告知CMを見て、結構な衝撃を受けた。そのCMでは、「Daniel」に収録されている「煩悩のブルース」がかかっていたのだが、青春パンクだったはずのモンパチがマイナーコードで、激しくも苦しげなメロディラインを歌っていたのだ。
おやおや?とそこで認識を新たにし直ぐに「Daniel」を買って愛聴していた。アルバムを通して聴いているうちに特に「亀」や「地球図鑑」という曲が好きになった。そのどちらも作詞作曲はギターの儀間崇だった。

「Daniel」のツアーで初めてモンパチのLIVEを見た。その後も、何度か地元のフェスで見たことがある。当時印象的だったのは、モンパチの全国ツアーの過酷さだった。全国ツアーでは半年かけて60カ所くらい周っていたように記憶している。当時から音楽が好きでかなり多様なロックバンドを追いかけていたが、全国ツアーと銘打って本当に全ての都道府県を回るバンドなんて見たことが無かった。バンドという華やかな存在に憧れていた当時の自分が、肉体労働としての辛さを直に感じたのはその時が初めてだったかもしれない。

2018年のフジロック、グリーンステージでもモンパチを見た。本当に久しぶりのモンパチの演奏をとてもよく覚えている。バンドとしての仕上がりが完璧だった。3人の呼吸が完璧にあっていて、演奏が走る部分、溜める箇所がいちいちスパッ!スパッ!と揃っていて、ステージを眺めながら「あー、この人たちは眠ってても完璧な演奏ができるような人たちだなあ」と感じた。

そんなことがあった約1年後にギターの儀間崇が突然バンドからの脱退を発表する。当時、少なからずショックを受けた。ただ、瞬時に納得したことも事実だ。昔モンパチに感じた過酷なツアー生活を思い出したからだ。3人がずっと同じ熱量でバンドに向かえるなんて普通はあり得ない話だ。ツアーが始まったら数ヶ月家にも帰れないと考えると、本当に特殊な生業だと思う。

この映画は偶然、配信されているのを発見して、なんの前情報も無しに見た。元々、音楽のドキュメンタリーが好きで色々見てきたが、このドキュメンタリーはなかなか異色だと思う。なぜなら、主題が「バンドメンバーの脱退」だから。儀間崇は脱退発表後に、LIVEをすることもなくスッとバンドを離れたはずだ。ファンからすると消化不良だったと思うが、その想いへの回答をバンドはこの映画で果たすことになっている。

モンパチらしい丁寧な説明だったし、3人の距離感が素直に表れていて「バンドってこういうもんだよな」と逆に冷静に見れた。

一番好きだったのは、(儀間崇の脱退について)いつからズレたと思いますか?という質問に対して、清作が答えたシーン。半分笑いながら清作は「ズレてたのは、最初っからじゃないですかね」と答えた。

三人三様なのがバンドで、音楽だけで繋がっていた3人が20年間ずっと一緒に活動を続けたことがそもそも不思議。バンドメンバーとの関係って、兄弟でも同僚でも友達でもない不思議なものだ。

この映画を見てバンドっていう関係性の儚さ、それだけにバンドじゃなければ感じれないカッコ良さがあるということを久々に感じることができた。

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