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読書感想文に悩む高校生へ~ラブカは静かに弓を持つ~2023年青少年読書感想文(高校生の部)

はじめに


「ラブカは静かに弓を持つ」が2023年の読書感想文(高校生の部)課題図書になっていることを知ったので久しぶりに私も読書感想文を書いてみることにしました。

ネタバレあります。

いつもはTwitterで読書記録を残していますが、140字の制限を超えて書くぞー!えいえいおー!

私の読書感想文の練習が主な目的です。同じ作品を読んだ方にも「こんな感想を持ったんだー」と楽しんで頂けたり、最後にはこの作品の注目ポイントもまとめているので「夏休みの宿題死ぬ」ってなっている子に少しでも役に立てたら嬉しいです。

あ、高校生の部課題図書3冊あるけどこの作品が一番感想文書くの難しいと思うよ!私はね!そう思う。感受性豊かな子や表現力に自信のある子はこの作品読んで書くの楽しいと思うのでおすすめ。逆に、国語で心情読み取りが苦手だったり、本を読んで共感がしにくい子は他の本の方が読書感想文は書きやすいんじゃないかな?

では、あらすじから行ってみよーーーー!

あらすじ

武器はチェロ。
潜入先は音楽教室。
傷を抱えた美しき潜入調査員の孤独な闘いが今、始まる。
『金木犀とメテオラ』で注目の新鋭が、想像を超えた感動へ読者を誘う、心震える“スパイ×音楽”小説!
少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた橘。
ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。
目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。
橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。
師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が迫り……

集英社


テーマは「信頼できるもの」


今の自分が本当の自分だって素直に「はい」と言えますか?

社会生活を送る大多数の人は様々な顔を使い分けて生きているのではないだろうか。私自身もそうして毎日を過ごしている。仕事の顔、主婦としての顔、SNS上でも顔がある。

この作品でも主人公の様々な顔が登場する。
スパイの顔、所属する仕事の顔、過去のトラウマに悩む少年の顔、
そして、ただただ音楽を愛する者の顔

やがて主人公はスパイとしての自分と音楽教室を純粋に楽しんでいる自分との乖離に苦しむ。


私はこの作品のテーマは「信頼」なのではないかと思う。
自分の何を信じるのか。または相手の何を信じるのか、信じたいのか。

信頼関係はいったいどこからやってくるのだろう
かけた時間?心が通じ合った時?同じ思いを持った時?傷を共有した時?

ここから先ネタバレ有りです




自分を信じるまでの過程

この作品ね、主人公が自分を取り戻していく過程が美しいのよ。
最後は澄んだ瞳で今を見ることができていたんじゃないかな……と私は思ったよ。

主人公は自分を取り戻していくことで、自分を信じられるようになった。その過程は大きく3つあったと思っていて、

1つ目は

①過去のトラウマと向き合い、乗り越えたこと


少年時代に誘拐未遂にあったことがきっかけで悪夢を見るようになったり、チェロを弾くことができなくなった主人公。その時から時間が止まってしまっていた。

 ふと、誰かの気配を感じて橘が足を止めると、鏡面になっている店舗のシャッターの枠にみずからの姿が映り込んでいた。
 そこに立っている人間は、疑う余地もなく大人で、遠い昔から固定されたままだった脆弱なセルフイメージを軽やかに飛び越えた。

ラブカは静かに弓を持つp289-290

この文章が印象的だったよ。少年時代から止まったままだった時が動いた瞬間の表現が美しいね。

2つ目は

②情熱を持てるものがあるか


ここではチェロのことだね。
私は、この作品読みながらチェロの曲を聴いてたんだけど、チェロ弾けるのかっけぇえええええ。私の呟きはさておき。

チェロが弾きたい、と思った。
もう一度。

ラブカは静かに弓を持つp283

もうねこの一言に尽きるよね。主人公の素直な気持ちにぐっときた。チェロを弾く理由とか関係ないんだ。心がそうしろって言っている。

自分にも音楽教室の仲間にも嘘をついていた主人公の本当の声が溢れ出た一言。

物語りのキーとなるネタバレあります!!

3つ目は

③社会的な人との繋がり


師弟関係と音楽教室の仲間との絆というのは言うまでもなく、なんだけど。

私が注目したのは会社の同僚。
音楽教室へのスパイを依頼した上司(以降 塩坪)。そして、同じく音楽教室にスパイとして潜入していた同僚(以降 三船)。

塩坪は、どことなく音楽教室に通う前の主人公に似ている。自分と似た何かを感じていたから音楽教室への潜入を依頼したのではないかな。

慎重で、周到で、自分以外を信用していない、孤独な男がつけそうなパスワード。

ラブカは静かに弓を持つp210

このパスワードを導き出した瞬間、主人公はどんな気持ちだったのだろう。パスワード解除できた達成と同時に、このパスワードを選んだ塩坪の心の内を覗いた気持ちになったのでは。

そして、同じく音楽教室にスパイとして潜入していた同僚の三船。主人公が三船へ抱く印象がどんどん変わっていく描写が面白かったね。疑心、嫌悪、同情を経てなんと最後には気になる存在に!!

 定時までには送りますね、とロングコートの美女がひと足早く、正面玄関から去って行く。
それから終業時刻まで待ってみても、三船からメールは届かなかった。

ラブカは静かに弓を持つp294

「信頼」のきっけになりやすい同じ体験の共有をした間柄。しかし、今回はそれ以上の関係発展がなかった。


「繋がり」という言葉って最近よく使われるよね。大衆的には良いこと。良い繋がりが注目されがちだと思うんだけど......繋がりに良いも悪いもなくて。繋がることで「あ、色んな人がいるんだな」って思えることが大切なんじゃないかと思うんだ。

以上が主人公が自分を取り戻し、自分を信頼できるまでの過程でした。



うーん、この作品では主人公の自分自身への信頼は描き切ったな!という感じがするけど人との信頼についてはお茶を濁して、読者に委ねている感じがするね。

人が人を信頼する時とは……分からないね。
だから「ラブカは静かに弓を持つ」というタイトルに繋がるのかなと思ったよ。日の光も入らない深海で自分の音を鳴らす。共鳴してくれる人もいるだろうし、耳に入らない人もいる。

自分が信じられる音を奏でられるようになった主人公の姿は美しかったね。

暗くて先が見えない気持ちに襲われても、自分が情熱を持てるものを見失わず。自分の音を(声を)静かに奏でられたらいいな。きっと、誰かが聞いてくれるから。そして私も誰かの音に耳を傾ける。そうやって社会が繋がっていけば高い所まで音が届くはず。

読書感想文 注目ポイント

長くなったから読むの疲れたよね。ここまで読んでくれてありがとう。
箇条書きでサクッとポイントを

  • 主人公の心情変化

  • 音楽と人との繋がりについて

    • 師弟関係や音楽教室との仲間の絆

    • 作中挿入歌や映画の内容

  • 信頼関係とは何か

    • 信じていたものが壊れたり壊してしまったら

  • 仕事をするということ

    • 自分が主人公と同じ仕事を依頼されたら

    • 上司や同僚はどのように見えた

こんな所が読書感想文で重要になるポイントかな。

読書感想文 難しいポイント

ここもね、長いと読むの疲れるから箇条書きにしようね

  • 結論(自分がどう役立てたりしたいか等)がふわっとしてしまうこと

  • 仕事していないと分かりにくい大人のモヤモヤ感が作中にあること

  • 言葉で表しにくい「信頼関係」

社内政治とか派閥とかね、覚えなくてもいいよ。でも、学生でも似たようなことあるよね?大人も同じような人間なんだね。愚かだね。

最後にこぼれ話


この本読んだら確実にチェロの音楽聞きたくなるよね~ここまで読んでくれた優しいあなた。素敵な夏休みを送るんだぞ〜

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