THE SMITHS ジャケットアートの内観
トップ画像は、The Smiths の名盤 Louder Than Bombs(1987Compilation Album)。私にとって懐かしいCDモデルは誰か、思えばインターネット以前1990年当時は容易に知り得なかったけど、ボーカルのモリッシーが敬愛するイギリスの劇作家 Shelagh Delaney (シェラ・デラニー)女史。モリッシーは同じマンチェスター近郊出身であるシェラの作品から、インスピレーションを得ていました。イギリス労働者階級の生活(Kitchen sink realism)を描いた彼女のデビュー作「A Taste of Honey(蜜の味)」は、ビートルズもファンで映画の挿入歌をリメイクしてます。
伝説のニューウェイヴ・バンド「The Smiths」は、独創的なビジュアル表現のジャケットを展開。モリッシーは、所属するUKインディー・レーベル「Rough Trade」のアートディレクターだったジョー・スリーと共に、興味を抱いた文学や映画のポップスター映像を厳選したもの。カルト的に美しいデザイン性にも魅せられて、バブルな学生の頃に買い込んでました。
いくつか、余談とともにご堪能下さい
先日ロンドン支店とTeams会議をしたら、イギリス人IT課長の部屋の壁に、なんと傑作The Queen is Deadのポスターが飾ってあるではありませんか。冒頭のSmall Talkで意気投合、嬉しい発見でした。
1986年 UKチャート2位となり、過激な英国社会批判をぶちかますアルバムは、フランスとイタリア合作映画「さすらいの狼」フランスの名優 Alain Delon(アラン・ドロン)がまどろむ姿。
This Charming Manのジャケットに写るのはフランスの俳優 Jean Marais、Jean Cocteauの1949年の名作映画「Orphée(オルフェ)」の1シーン。
ジャン・マレーはジャン・コクトーの長年の愛人関係だったとのこと。
ギリシャ神話で、オルフェウスが冥界に行って亡くなった妻を連れ戻そうとしたところ、冥界の王ハーデスが、地上に着くまで決して振り返ってはならないと忠告しました。しかし、妻が後ろから来てくれているか、心配になったオルフェウスがつい振り向いてしまい、妻のエウリュディケは冥界に連れ戻されてしまった、という伝説を1950年代のパリを舞台に脚色。日本書紀の神話「イザナギとイザナミ」にも似ていて奇妙に思ったものです。東西を問わず「見てはいけないものを見たら~」の伝承は、世界各地にあるそうで、人間の集団的な無意識によるとの説があるみたい。
映画「Yield to the Night」(1956年)の1ショット。「イギリスのマリリン・モンロー」と呼ばれた女優 Diana Dors (ダイアナ・ドース)が、ベッドに横たわる写真。
Shoplifters Of The World Uniteのカバーを飾るのは、ロックの王道スターElvis Presley (エルビス・プレスリー)
Shoplifter(万引き犯)をモチーフに、邪悪な権力者や戦争の企てから世界を救うため、社会的弱者に団結しようぜ~と呼びかけるメッセージ・ソング。モリッシーの挑発や毒舌には、ほのかなロマンチズムが込められています。
アメリカ・デンバーを舞台にして、The Smiths解散による若者達のショックを描いた青春映画(2021年)のタイトルにも引用されましたね。
続いて、早世したJames Dean(ジェームズ・ディーン)がバイクを走す場面 、シングルカバー Bigmouth Strikes Again。ジョニー・マーの超絶なギター・リフ、アルベジオが響くノリのいい重低音ロック。曲名は一言でいえば「口は禍の元」なんだけれど。余計な一言で相手を傷つけ後悔する自分を、百年戦争のジャンヌダルクになぞらえて「I’ve got no right to take my place with the Human race」(人類の仲間入りする資格すらない)と歌う自虐曲。
こちらは、アメリカの小説家Truman Capote(トルーマン・カポーティ)がなんと若き日にジャンプしている姿。「Breakfast at Tiffany’s ティファニーで朝食を」の作者というと日本では分かり易いかも。イギリスのファッション系写真家セシル・ビートンが1949年に撮影したそうです。
The Boy With The Thorn In His Side 邦題「心に茨を持つ少年」のカバーに何故カポーティを起用したのでしょう。彼の生い立ちは、酷薄な家庭環境で孤独に苛まれながら、文筆の才能を開花させました。甘美な社交界に浸り、大人気を博した元祖セレブ・ゲイの繊細さに、モリッシーは感化されたのかもしれませんね。
最後に、BBC Radio 4長寿番組「無人島ディスク(Desert Island Discs)」のインタビューをご紹介。無人島に唯一持っていくとしたら何か、という質問へのモリッシーの語り草です。
うーん、眠り愛好家の私は、この絶妙な死生観に共感してしまいます。
なお、持っていく文学作品はやはり「オスカー・ワイルド全集」とのこと。モリッシーのウイットに富んだ異端のセンスがたまらない。
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