あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #6
#6 弟のこと
五歳離れた弟がいる。たったひとりの弟だ。
幼稚園のころ、「きょうだいがほしい」とねだると、若い日の母はきまって「神さまに妹か弟が欲しいってお願いしたらもらえるかもしれないよ」と言った。
だから、母がほんとうに妊娠したとき、この子はわたしが望んだからやってきたんだと思った。
ある日、朝起きたら、目の前に母の足がころがっていて、あ、また寝てるあいだにひっくり返っちゃったと思いながら起き上がったら、頭が母ではなくてギョッとした。母のパジャマを着た、母の妹だった