1940年代以来の中止。2020年は幻となったイタリア・シエナのお祭りパリオ
10年前の今頃、私はイタリアにいた。
13か月の留学も後半戦となった2010年の夏。
そこはイタリアトスカーナ州シエナ。
「シエナ色」といわれる赤茶色のレンガでできた街並み
そしてその中心にぽっかりと広がるカンポ広場
毎年7月2日と8月16日の2日に渡ってこの美しい石畳の広場にわざわざ土を運び、馬を走らせるパリオというお祭りがある。
シエナを17の地区に分けたコントラーダと呼ばれるチームで競い合うお祭りで、世界中から人が集まる。
シエナといえばパリオといっても過言ではない一大行事だ。
そして2020年の今年、このお祭りは異例の中止となった。
11世紀から始まったパリオが中止となったのは1940年と1944年のみ、第二次世界大戦中以来のことらしい。
仕方がないことだとはいえ、またあの光景を見れることを願ってここに過去のパリオを書き記しておきたいと思う。
パリオは鷲や狼、ヒョウなどの動物からカタツムリや貝、波といったチームがあり、この時期は各地域にそのシンボルマークの旗が掲げられるためお祭り好きの私は見ているだけでもなんだかワクワクした。
(”Tartuca"と呼ばれる「亀」地区の旗と、"Onda"と呼ばれる「波」地区の練習風景。旗を持って応援する少年は、今頃イケメンの青年になっているに違いない)
生まれた場所(地区)が自分のコントラーダとなることもあり、その熱狂ぶりは凄まじいものがある。
ちなみにシエナ出身者ではない人は、初めて泊まった地区がコントラーダとなるらしい。私はサイの地区に住んでいたのでサイチーム。
2日に渡る本番前後には、それほど広くはない広場に驚くほどの人が来る。
シエナの人たちのあの熱狂ぶりからしても、この発表にどれだけ街は静まり返っただろう。
(馬が走る部分以外に人が押し寄せ、まさに鮨詰め状態になるパリオ。確かに今年はこれで開催するのは厳しいとは思うけれど、やはり残念)
本番の数週間前から演舞する鼓笛隊の練習が始まってそこかしこで練習風景を見かけたり
抽選で良い馬が決まった時の歓喜
優勝したコントラーダがその地区の教会まで練り歩き祝う姿
今はコロナはもとより、あれだけのエネルギーの発散先を失ってしまったシエナの人たちを心配している。
あの美しい景色は、パリオでなくても私の何度でも行きたい場所。
来年はどうか、シエナにあの活気が戻りますように。