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無条件の愛


1. 無条件の愛は健全か?

無条件の愛は、ロマンチックかつプラトニックであり、家族のような深い絆の中で生まれるものが典型であると思います。条件無しに人を愛することができたら、それはまさしく愛の頂点といえるのかもしれません。とはいえ、闇雲に無条件に誰かを愛することは、本当に健全なことではないのかな…とも私は思います。

多くの人は、何があっても相手をずっと愛することができると信じたいのかもしれません。けれど、こうした感情や考え方が変わる出来事や状況は、いつだって起こり得ます。

ときに、過ちを犯してしまった他者に共感を示したり、優しさを与えたりすることも大切なのは確かです。でも、何があっても無条件に人に愛を示すことによって、自分の幸福や精神的な安定を犠牲にしているとしたら、それはどうなんだろう?という話になってしまう気がします…。 


2. 無条件の愛の暗い側面

無条件の愛という考え方は、「お互いを何でも受け入れる」という希望に基づいているものではあると考えられるけど、そこにはいささか暗い側面もあります。

無条件の愛について、「何があっても誰かを愛し続けること」だと定義してしまうと、他人が自分の踏み込んでほしくないと思う境界線を超えてきたり、不快感を与えたり、危害を加えたりする状況に自分が置かれても、この定義を自分に言い聞かせようとすることがあります。この場合は、無条件の愛という概念は成立しなくなると思います。


3. 愛と虐待

愛と虐待は共存できないものです。無条件の愛という概念は、被害者が虐待的な状況や人間関係に留まるように圧力をかけることもあると思います。

たとえば、自分の気分が乗らないときでも、相手からの要求を強要されることが多いとします。自分はそれを相手からの自分に対する愛情表現だと正当化して、すべてを受け入れようとするものならば、それは無条件の愛とは言わないと思います。なぜなら、相手の愛には「要求に従う」という条件が存在していて、その行動は明らかに自分の気持ちを無視していることになるからです。


4. 無条件の愛の実現は困難

無条件の愛は、不健全で虐待的な人間関係を続けることを正当化するために使われることがあります。たとえ相手が自分を傷つけたり、自分に対して不誠実であったりしても、自分は無条件に相手のことを愛しているという人も実際にいるかもしれません。だけど、自分にとって有害な関係を続けることは、相手からの無条件の愛でないことの典型的な例です。

無条件の愛とは、一見するとすべてが心温まる優しいものであるかのように感じられます。でも、この種の愛をどのように実現できるのか?という問いを少し深く掘り下げてみると、無条件の愛なんて実現することは難しいんじゃないかな…と思います…。


5. 無条件の愛とは

この無条件の愛という概念は、やはり主観的であり抽象的で、紛れもなく複雑な感じがします。無条件の愛とは、本当に「何があっても誰かを愛し続けること」を意味するのでしょうか?何の条件も制限もない中で、他の誰かに対して深い愛情や好意を示すことが、果たして一番大事なんですかね…。

欠点や短所などを含め、周りの人をありのままに愛し、感謝の気持ちを抱くことで、他者との絆を深めることができるのかもしれません。すべての人間関係は、お互いが期待を持つことなく、自由に与えられる愛により、健全な状態に保たれるものだと考えられます。

無条件の愛の概念をより良い言葉で表現するなら、「心からの愛」とも言えると思います。このような条件付きの愛・無条件の愛という概念を知るだけでも、人の見方が少し変わるような気がします。

完全に無条件で人を愛するために最善の努力を尽くそうとしても、やはり条件は生じるものです。でも、心を込めて誰かを本気で愛するなら、自分の条件や期待は脇に置いておき、相手を真剣に愛するために努力する、という選択を積極的に取ることができると思います。


6. 社会心理学者フロムの言葉

社会心理学者のフロムという人は、「愛を与えること=自分の生命を与えること」だと言っています。言い換えると、自分の喜び、興味、理解、知識など、自分にあるすべてを相手に惜しみなく与えるということです。幸福に生きるための最高の技術、…それが「愛」らしいです。

大切なことは、「自分から先に誰かを愛さなければ、愛は返ってこない」とも言われています。求めてばかりで何一つ与えようとしない。愛されたいけど、自分からは愛す勇気もない。そんな人は愛を手にすることは一生できないだろう。…というような現実的かつ辛辣なことが説かれています。

資本主義社会では、ものは商品であり、交換で成り立っています。だから、損得勘定を捨てて、人を愛するといのは難しいと思います。とはいえ、一時でも自分と同じくらい無条件に愛せる人がもしできたのであれば、それはとても幸福なことです。そんな人は大切にすべき存在ですよね。


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