『カケラ』|読書感想文
湊かなえさんの『カケラ』を読んだので感想を書きます。“イヤミスの女王”として知られる湊かなえさんの本を久しぶりに読みました。私は読んだ後に嫌な気分になるミステリ小説、通称「イヤミス」が結構好きです。
あらすじ
久乃さんがわからない
久乃さんが何を考えているのか、終始よくわからない感じでした。どうして、有羽さんの自殺の真相に迫ろうと思ったのか、その動機も釈然としていない印象でした。ただ有羽さんが自分の担当した患者だったから、という理由だけで、個人で聞き込みを行うような人物には思えませんでした。久乃さんは、結構曲者で悪態もつくし、棘のある冷たい性格である気がしました。自殺した患者さんへの罪滅ぼし的な意味合いだったとしても、失われた命は戻ってこないよ…と私は思いました。
みんな口が悪い
太っている人に対して「デブ」「ブタ」と揶揄する言葉が結構出てきたのですが、容姿を揶揄する言葉は使っちゃダメだなあ…と改めて思いました。単なるイジリとか、太っている事実をそのまま言っているだけ、というのは言い訳にも何にもならないと思います。久乃さんも含めて、平気で悪態をつく登場人物が想像以上に多くて、なんかびっくりしました。
お母さんが作るドーナツ
有羽さんは、お母さんが作るシンプルなドーナツが大好きだったそうです。実際、学校の文化祭でもお母さんのレシピのドーナツは大好評だったとか…。ものすごくドーナツという言葉が何度も出てくるのですが、有羽さんの大好きなものが有羽さんを太らせている原因でもあるのが切なかったです。有羽さんは自分とお母さんをドーナツによって、何とかつなぎとめているようにも感じられました。
異常に太らせること=虐待?
有羽さんは積み重なったストレスから、異常にドーナツだけを求めるようになって、最高で138kgまで太ったと書かれていました。衝撃的な数字でした…。ネグレクト(育児放棄)とは真逆で、毎日大量にドーナツを与えて、異常に太らせるというのも、担任の先生は親による虐待であると認識していました。
お母さんが無理やり有羽さんに食べさせているわけでないとしても、有羽さんの健康への意識が低いと感じました。お母さんは管理栄養士だったそうなので、余計に他の方法で何とかできなかったのかな…とちょっと残念に思いました。有羽さんは虐待じゃないと言っていましたし、お母さんも虐待じゃないと言っていましたが、両者とも危機感が薄いのでは…と私は不気味さや恐怖を感じました。
有羽さんが語った真実
関係者ではなく、本人の口から語られた言葉が一番重みがあって、真実らしい真実だと思いました。でも、ただただ悲しいことばかりでした。家庭の事情が複雑だと心に影を落としてしまうことは、避けられないな…と実感しました。有羽さんにとって、お母さんとお母さんが作るドーナツがどれほど大切であったかもすごく伝わってきました。
太っている=醜いという認識
私もダイエットしすぎた過去があるし、痩せていたい願望が強くあるので、読んでいて複雑な気分になりました。私は「太っている=醜い」という認識は薄めですが、あるにはあります…。痩せているのがきれいと一概に決めつけてしまうのは良くないと思いますが、結局痩せている方が私の目にはきれいに映るんですよね…。有羽さんが久しぶりに再会した家族から「こんなに醜くなって…」と言われていたのは、ひどいと思ったし、とても悲しくなりました。
すれ違い
みんな有羽さんのことを思って、行動しているようでしたが、とてもすれ違っていると感じました。有羽さんは久乃さんの力を借りて脂肪吸引をしましたが、結局、有羽さんは誰からも救われず、絶望して自ら命を絶ってしまったという悲惨な結果に終わっただけだったんです。人間がいかに身勝手で物事を判断しているのかが、よくわかりました。
一人の人物の独白を久乃さんが聞くという感じで物語が展開される構成でしたが、少々難読でした…。一気読みした方がいい作品だと思います。久乃さんのセリフはなく、相手の人物が話した内容にものすごく焦点が当てられていたので、章ごとに登場人物の人物像がはっきり伝わってきました。一人一人の異なる解釈が知れて興味深かったですが、私は誰のことも好きになれませんでした。でも、久乃さんが美容外科医として、最初と最後に語っていたことはとても響きました。後味が悪くて、湊かなえさんらしい作品でした。だけど、私はおすすめするなら『告白』の方かな…。