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死にたい人への処方箋③


さて、前回からの続き。
今回から目次をつけようと思う。前2つもそのうち編集する。そのうち。

人権なんてない

やや順番が前後するが、強制入院になったり拘束をされることになると、一応説明の書類を読み上げられた上で渡される。
内容は、あなたはなぜ入院なのか、なぜ拘束されるのか、どうなったら拘束が解けたり退院することが出来るようになるのか、が書かれたすごく形式的なものである。
中に一応「人権は尊重されています」と問題があれば国の相談機関へ、とご丁寧に相談先まで書かれている。
だがしかし、前回も少し書いたが病院ではとにかく医者が絶対!だ。

どういうことかというと、相談先の住所や電話番号は渡されるのであるが、手紙や文書を送ったり、電話をかけるには医者の許可が出ないと出来ないのである。
入院するときに財布もスマホも取り上げられて、拘束され閉じ込められる。
そう、一番人権がないときには絶対に相談なんて出来ないのだ。

保護室を出てただの閉鎖病棟に移ると公衆電話は医師の許可が出ると使えるようにはなる。
テレホンカードは自費でぼったくり価格で週に1回のみ看護師さんに依頼すると買ってきてもらえるが、このテレホンカードも金品扱いで盗難等があると厄介なのでナースステーション預かり。
電話をかけたかったらナースステーションに声を掛けて受け取らないといけない。そしてどこに電話をかけるのか聞かれる。
そう。やっぱり人権なんてないのだ。

ここまで読むだけでも相当地獄だとわかってもらえると思うが、まだまだ地獄である。

死なせないための食事

朝昼晩の3食、時間になると看護師さんがテーブル毎ガラガラーっと食事を持ってきてくれる。
びっくりするくらいおいしくない。不味いまではいかないと思う。
保護室で拘束されて、ただただ天井を見つめて時間が過ぎるのを待つだけ、という究極の虚無の中、唯一の娯楽っぽい食事のはずなのにおいしくない。
うつだから、味がわからないからとかそういうレベルではない。
食事さえ虚無。なんの感情もわかない味がする。

まずすごく冷めてる。これは熱かったら火傷したがる人がいそうな保護室仕様だと思う。まぁ仕方ない。
だがそれを抜きにしてもおいしくない。質素とか粗食とかを超えた感じの献立。お金がかかってないのが一目でわかる感じ。
とにかく必要なカロリーと栄養素を取らせるだけなのだ。

大体白いごはん(米の量はすごい多い)と、汁物、主菜と小鉢が1品ずつといったラインナップなのだが、見た目とか彩りが悪い。
唯一褒めるとしたら、汁物だけは薄味好みの私にはちょうどいい濃さだった。
(私は市販のカップスープやインスタント味噌汁は既定の倍量以上のお湯を入れないと美味しく飲めない。つまり普通の人にとったら味薄!ってなるやつ)

それをベッドに縛られたまま、手だけ拘束を外されて、敷き布団の下に折り畳み式の鉄の柵みたいなのを入れられて、無理矢理座らされて食べることになる。看護師が傍に付きっきりで監視されながら。

そして、私に渡されるのはスプーンが1本のみだ。
箸とかフォークだと刺しちゃうからね。仕方ないね。

医師の許可が出たら箸も使えるらしいが、結構これ忘れ去られがち。
保護室最終日のお昼にナポリタンが出たのだけど、
その時も私のお盆にはスプーンしか乗ってなかった。どう食べろとw
この日はもう退院日の目途も立っていたので、看護師さんに言ったら「先生に確認してきますね」って言われ、15分ほど待たされた後お箸の許可が降りたけど。
もしこれが初日とかの患者だったらどうするんだろう。
というか、普通持ってくる途中で気づきませんかね?麻痺しちゃうのかしら。

人間の人間らしくない生活

拘束中は食後の歯磨きも縛られたままだ。
看護師が歯ブラシと小さいバケツみたいなのを食事と一緒に持ってくる。
食事が終わったらその場で磨いて、ごはんのときの飲み水の残りでうがいして、その小さいバケツにぺっして終わりだ。
ここでも人権はない。
でも、他人の歯磨きのぺっを見せられたり運ばされたり、そのバケツを洗ったりしなきゃいけない看護師さんの方にちょっと同情した

顔も自由に洗えない。
朝ごはんと夜ご飯と一緒に看護師さんが持ってくるペーパータオルで拭くだけ
そしてそれで手も拭く。テーブルも拭く。

そして、食後と寝る前は薬を口に放り込まれ、飲んだか口を開けて確認される。
このときなんの薬が入れられていたのかいまだに知らない
入院前は寝る前の眠剤としてマイスリーとサイレースを出してもらっていたが、体感としてはなんか違った気がする。
抗うつ剤は使用感とか効果を実感したことがないのでそれこそわからない。

保護室の1日は天井をや壁を見つめ、時間がただ過ぎるのを待ち、時間が来たら食事をさせられ、時間が来たら電気を消され寝ろと言われ終わる。
ただそれだけだった。本当に本当にただそれだけだった。

あ、左右の部屋から「すいませーん!!!!!」の大声とか暴れたり独り言で喋ってる声は聞こえる
隣の男の人は10分に1回くらい「お水ください」って看護師さんを呼んでいた。飲みすぎなんで我慢しましょうと言われたら「じゃあお茶ください」と言っていた。そういうことじゃねえw

ちょっと人間に近くなるまで

そんな人間扱いされない虚無を3日間ほどいい子に過ごしていると、徐々に拘束が緩くなる。

まず部分的に解放される時間が出てくる。
朝の10時から夕方の4時までは腕の拘束を外して腰だけになった。
寝返りは自由に打てるようになる。縛られてはいるけど横向き寝にもなれる。だいぶでかい。
たぶん夕方4時になると腕のベルトを看護師さんが持ってきて再び拘束。
たぶんここで嫌がってはいけない気がした
ナースステーションの方から申し送りで反抗とかなく大人しく戻りました、みたいな内容が聞こえた気がする。気がするだけかもしれないけど。

次の日に朝6時から消灯する夜9時までは腰も外れて部屋の中は自由に過ごせるようになった。
柄にもなくラジオ体操とか屈伸とかストレッチとかした。
たぶんカメラでの監視はされているので、あんまりうろうろして落ち着きがないと思われたら嫌なので部屋んぽはしなかった。
食事も付きっ切りで監視されながらではなくなった。人に見られながら食べるのは結構ストレスが大きい。
歯磨きもトイレにぺっしてよくなった。
消灯前に看護師さんが薬とベルトを持ってくる。まだ寝るときは腕も縛られる。

そして次の日には看護師の同伴でちょっとだけ部屋の外に出て、前室という保護室共同の洗面所がある部屋で顔を洗うことが許される。
自殺未遂する日ぶりに顔を洗った
洗顔フォームは売店で買ってきてもらった。基礎化粧品なんてものは売ってなかった。乾燥で顔がカッピカッピになった。
しかし曲がりなりにもここは病院だ。
ちょうど回診で、医者に「なにか困っていることはありますか?」と聞かれたので、「顔を洗ったら顔がつっぱって痛いです」と言ったらヒルドイドのジェネリックのヘパリンローションが処方してもらえた。大事。
夜寝るときも腰だけの拘束になる。

そうしてやっと、その次の日に拘束からは解放された。
風呂の日だったので、やっと風呂にも入れた。1週間以上ぶりである。
本当は水曜と土曜と週に2回入れるのだが、到着したのが土曜で逃し、たぶん前回の水曜は許可が下りてなかったのだと思う。
風呂はたとえ保護室にいようとも大浴場的なところなので。
保護室以外の人は時間内に自由に風呂の前に並んで順番待ちをして入るが、保護室は看護師さんに呼ばれて連れていかれるまでは入れない。順番待ちはしなくていいのだが。

脱衣所では看護師さんが見張ってはいるが、風呂の中では自由だった。
待たれているのを気にしなければ時間制限もないと思う。ノロノロ洗い、ゆっくり湯船に入った。

看護師さんは脱衣所で監視しているだけだったが、大浴場の中ではヘルパーさんが認知症の婆さんや、太りすぎて自分で洗えない人を洗っていた。
「はい立ってー」ってつかまり立ちさせて尻をゴシゴシ洗ってあげていたのが印象的だった。洗っている方も洗われてる方も大変そうだった。

シャンプー等は売店で買ってきてもらったが、いち髪とよく知らないメーカーの2択しかなかった。ボディソープは1種類しかなかった。
ボディータオルは洗って乾燥されてはいたが、貸出だったので潔癖にはしんどいと思う。
風呂から上がるとドライヤーは順番待ちだったので大人しく待った。ホテルのアメニティで置いてあるような折り畳みの目の粗ーいヘアブラシは売店に売っているが、コームは売っていないし持ち込めもしないらしい。尖ってるから。
洗い流さないトリートメントもないし、目の細かいコームもないので乾かしたら髪の毛はバッシバッシである。

そして風呂からまた看護師さんに引率されて保護室に帰る。
なぜか風呂から帰ったら実家のようなでかいプラポットに入った緑茶を持った看護師さんが巡回してくる。久しぶりに茶を飲んだ。
風呂に入ったら疲れたのでお昼寝した。

ちょっと人間に戻る

そうして徐々に徐々に行動してもいい範囲が広がる。

その次の日から短時間から少しずつ部屋の施錠が解除される時間が増えていく。
上にもちょっと出てきたが、前室という保護室共同の洗面所の付いた部屋までは出れる。
この部屋にはテレビとテーブルとソファ、そして何冊か雑誌が置いてあった。ちょっと娯楽とか世の中というものに触れられるようになる。
テレビは好きじゃないが、世の中と触れ合えるのが嬉しくて他に誰もいないときを見計らって出てニュースだけ見ていた。
独り言とか喋っている人が前室にいるとわかるのである。

一度間違えて隣の部屋に帰ってしまった。お水ください男じゃない方である。
たぶんおばさん。ベッドに寝ながらずっとうーうー唸っていた。隣同士の音は丸聞こえだと思っていたが、壁は意外と厚いことを知る。

そんな感じで数日過ごし、徐々に人間らしさと近づいてきた。


今日はここまで、また次の機会に(´・ω・`)

社会に貢献します、とか偉そうなことはいいません。貰ったらハーゲンダッツを食べたりヒトカラしたり、いっぱい貰ったら新しいパソコンを買ったりして「私が」幸せになります。