読書記録:図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか?
著者・須黒達巳
出版・2022.02.15
発行・ベレ出版
ISBN978-4-86064-676-9
芽吹きの季節,もう新緑が美しくなってきた。
世界にはこんなにも生き物がいるのに,
その名前をほんのいくらかも知らない。
そして図鑑とにらめっこしてみる。
わかったような,わからないような。
さて,図鑑を見ても名前がわからないのはなぜだろう?
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名前を知ると,それを認識すると,世界の解像度が上がる。
これについては,実感がある。
以前に「シダの扉」という本を読んだとき,
その後は,道端のシダが気になるようになった。
世界は何一つとして変わっていない。
変わったのは,私自身の世界の見方である。
本書の目的は,
「私はこんなことを考えていますが,皆さんどう思いますか?」
と読み手に問いかけることで,
「考えるきっかけを示すこと」だと筆者は言う。
本書は同定のハウツー本ではなく,
あくまでも筆者が同定をするという営みを
より高い解像度で見ることによって,
自分自身の同定に対する考えを深める本である。
さて,本書では似ているけど違う生き物を基に,
同定していくことを読み進めながら経験していく。
自分が当たり前に行っているものを改めて説明することは,案外難しい。
自覚していないコツだったり,ポイントを,他者に伝える必要がある。
「あ」の発音を教えてくれと言われても,難しい。
”v”の発音が下唇をかんで…と言われても,実践するのは難しい。
そんな当たり前を,丁寧に言葉にしてくれている筆者には,感謝しかない。
同定するためには「目」が必要である。
AさんとBさんを見分けるときに,
手足や目の数がポイントになることはほとんどない。
ポイントとなるのは,例えば,ほくろの位置,顔の輪郭などである。
その種が共通してもっている特徴は,
同定するためのポイントとしては,粗い。
見分けるためのポイントが何かを知らないことには,
いくら時間をかけたって,同定することはなかなかに難しい。
では,どうやって「目」を養うのか。
もう場数を踏むしかない。あるいは,知っている人に聞いてみる。
しかし,「目」が養われたとて,生物には個体差がある。
さらに,例えば生殖器のような肝心な個所がたまたま欠損していて,
見分けが困難になることもあるらしい。
いよいよ,同定は難しいぞ・・・
ーーー
世界にはこんなにも生き物がいるのに,
私はそのいくらかも知らない。
だけど,名前を知ることを通して,
世界はもっと美しくなるのではないだろうか。
そして,名前を知ることで,
少し優しくなれる気がする。
ーーー
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