見出し画像

不登校を引き起こすもの

 文部科学省の調査によれば、小中学校における令和4年度の不登校児童生徒数は前年度比22%増の29万9,000人となり、過去最多を記録、5年前の2倍、増加率も加速している。

 なぜこのような状況になったのか?

 某市長は「不登校の大半は親の責任」と発言。非常に腹立たしく不愉快な発言だが、同じような考えをもつ人はこの方だけではないかもしれない。「コロナが不登校急増の原因だ」と言う人もいる。果たしてそうだろうか。

 不登校やいじめのきっかけは個々に違えども、それらを生み出す根源的な要因の多くは「学校」にあると考えている。

 約150年前に始まった学校教育制度は、ほとんど変化することなく今日に至っている。同じ年齢の子供を同じ教室に入れ、同じ内容を統一されたルールの中で学習させる、これが学校教育の基本だ。かつて国力を高める必要があった時代には、この制度が大きく成果を上げた。個々の主張を避け、全員が同じ方向に向かって黙々と励む国民を育成することが高く評価された。教員が言うことは、ある意味絶対的だった。

 時代は変わり、日本経済は衰退、社会の価値観も大きく変わった。全体の富ではなく個々の豊かさが重視され、働き方や生き方も変容。しかし、学校教育はほとんど変わっていない。

 変わっていないのは教育制度の構造だけではない。教員の「体質」も、昭和の頃からあまり変化していないように感じている。

 近年、「教室マルトリートメント」という言葉に出会った。(「教室マルトリートメント」川上康則著:東洋館出版)マルトリートメントとは「不適切な対応」という意味だ。教室内で教員が行う不適切な対応が、学級内に刺々しい空気を生み出し、徐々に子供達を苦しめ、不登校やいじめの要因になっているという考え方だ。体罰や暴力は違法であるという認識は強いが、次のような違法性が弱い言葉については、指導という名のもと正当化され問題視されにくい。昭和世代には当たり前だった言葉だ。

「もういい、先生知らないからね。」

「はい、全員やり直し。」

「何回言ったら分かるの?」

「やる気がないなら勝手にしろ。やめてしまえ。」

「そんなこと小学生でも分かるでしょ。」

「まだやってるの? いつまでやるつもり?」

 親も「先生の言うことはちゃんと聞け」と言った時代には、これらの言葉を問題だと考える人はいなかった。
 社会が大きく変わった現代の学校では、こうした「毒語」が醸し出す冷たい空気が、相互に監視しあうムードを産み、真綿で首を絞めるように子供達の世界を支配する。そして、感受性の強い子やその空気感に耐えられなくなった子は、不登校になったり、他の子を攻撃したりする。

教員がこのような言葉を発してしまうのも、自身が受けた過去の学校教育による悪しき性癖なのかもしれない。

不登校やいじめの根源的な要因は、何気ない「毒語」により子供たちの間に醸し出されてしまった張り詰めた冷たい空気感。この考え方はかなり的を射ていると思う。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?