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ことし

年が明けた。明日からは2月。はやい。今年は少しでもやりたいことに挑戦できるだろうか、少しでもありたい私に近づけるだろうか。エネルギーはいるけど、言い訳をしてしまうけど、ちょっとずつ歩み寄っていけたらいいなあ。そう思う。ゆるっと明るいものでいたい。

『死と身体 コミュニケーションの磁場』内田樹、医学書院

わかったりわからなかったりがおもしろかった。

ことばはいつも「語りすぎる」か「語り足りない」かどちらかであって、語ったことばが「思い」を過不足なく「表現」するというようなことはけっして起こりません。p.147

野崎まどの『バビロン』を思い出した。(去年秋ごろにアニメを見た)似たようなことを物語の後半、大統領の奥さんが言っていたと思う。確かにちょうどよく言い切れることはないだろうと納得していたけど、それは誰かに聞かせるためだから、というのはなるほどなあと思った。(それにしても『バビロン』は体調の悪くなるアニメだった)

途中、武道?の話が挟み込まれてて、誰かと闘うときに、勝つ自分を想像して時間をずらすとか、それがすでに構造的に負けないみたいなことが書いてあった。私は武道とか運動とかそういうものとは縁遠いので、そこに沿って理解することはできないんだけど、音ゲーでなぞるとわかるような気がして面白かった。落ちてくる譜面に対して、落ちてくる前を見ようとしてるんだよね。そして、それがどんどん手元を見始めるともう負けてる。そんな感じかもしれんと思った。

ハリウッドのホラー映画がそうですね。ゾンビ―というのは、ついさっきまで親子や仲間や恋人だった人です。それがゾンビ―になったとたんに、襲いかかってくる。ぼくらはそれを見てケラケラ笑っていますが、考えてみたらとても不思議な行動だと思いませんか?p.210

考えたこともないことでおもしろかった。(そんな風に考えておもしろい?という声も聞こえそうだけど)なんで幽霊はこわいものなんだろうか。どれだけ大切に思い合った時間があっても、なぜひとつの後悔がすべてになって許されないと感じてしまうんだろう。生きている間ならどうとでもないことも、死を経るとそういう風に(祟りとか呪いとかになると)受け取られるのがすごく不思議で、それを当たり前だと思っていたことも不思議だった。

『読みたいことを、書けばいい。』田中泰延、ダイヤモンド社

するする読めた。とある体験レッスンに行ったときの質問やら相談のコーナーで、他人の悩みと回答を聞いていて、思ったことがある。うじうじ悩んでることって、うじうじ悩んでいる間にやっちゃえばいいのになっていうことが多い。(他人からすると)いくら考えたってどう転ぶか実際のところはわからないのだから。まあそんな感じのことが書いてある本だなーと思った。背中を押してくれる本。

『砂上』桜木紫乃、角川

ざっと話の筋を読んだ感じと全然違ってびっくりした。もっと華やかでぱっとしたサクセスストーリーかと思っていた。これだってじゅうぶん希望が詰まっているのだろうけど、「ああ現実ってこう、地味だよな」と妙に納得しながら読んだ。掴みきれない小説だった。たぶん、もう少し歳を取って、もう一度読んだら印象が変わる。

『おまじない』西加奈子、筑摩書房

ずっと積んでいたけど、とてもよかった!なぜ積んでたんだろう!(積む本は大体読まないことが多い)短編集っていい。それがわかるようになって嬉しい。

「孫係」が特に好き。他人のことを面倒だと感じてしまうときがある。「この人はなぜいつもこうなんだろう」みたいな。でも、その人も、そういう役割を演じてるのかもしれない。私との関係でそういう風に振る舞うという選択しかないのかも。『スキップ・ビート!』のマリアとお父さんの関係みたいな。孫とおじいちゃんの、他人からしたら悪いと見える秘密の共有が、とてもワクワクする。悪いことってほんの少しワクワク。ワクワクしてとってもかわいい関係。

西加奈子、やっぱり好きだー!わたしはわたしのままでいい!と肯定してくれるのがいい。

『白野真澄はしょうがない』奥田亜希子、東京創元社

なにも前情報を入れずに読んだので、混乱した。(あらすじさえ読んでなかった)『四畳半神話大系』的な、パラレルワールド的なあれかと思ったら違った。結構『おまじない』に通じるところがある本だと思う。

みんなそれぞれ抱えてるものがあって、秘密があって、人生があって。それでも生きてるんだよなあ、なんとか。少しでもいい方へ。健やかでいてほしい。

『しき』町屋良平、河出書房新社

するする読めた。(2回目)

春のにおい。春の夜のにおい。春の夜の公園のにおい。p.7

季節が変わる毎に、こういうみっつの文章が挟み込まれる。語感がとても気持ちがいい。声に出したくなる。ひらがなだから気付いてなかったけど、四季で『しき』なのだなーとあとでわかった。

帯に「踊ってみた」ってあるから、それがメインなのかと思ったら、そうでもない。町屋良平は『青が破れる』しか読んだことないのだけど、言語にできないところを言語にしているような文章で不思議だなあと思う。感覚的。

コロコロするする場面が変わるのが、『問いのない答え』みたいだなーとか思ってたら、解説が長嶋有で、くすっとした。

けど……かれはいいたくなかった。ほんとうには、いいようがなかった。p.87

すごく愛おしくなった一文。高校生の頃。もうほとんど覚えてないことの方が多い。中学生よりはずっと大人になった気でいたし、でもまだまだできないことの方が多くて、子どもだった。自分を持て余していたなと思う。今でも言葉にするのはちっともうまくないし、頭の中で喋ってばっかだけど、私にもあったのだ。言いたいのにわかってほしいのに、だけどどうしても伝える言葉が見つからなくて何も言えなかったことが。

今は、言葉に自分を押し込んでいるんじゃないかという気持ちになる。言葉にしたいけど言葉にならない、曖昧模糊、なくさないでいきたいなー。わからないことはきっと大切だから。

『ぼくは落ち着きがない』長嶋有、光文社

長嶋有の本積んであったな、と思って読んだ。

不思議なお話だった。最後なぜか愛おしくて涙がこぼれた。失くしてきてしまったものがあった気がした。くだらないことを妙に真剣に話し合ったり、些細なことで不仲になったり、今思えば「なぜそんなことで」ばかり。あの頃はそれが全てで、あの頃なりに精一杯だった。

タイトルがずっと謎だった。主人公という立場の望美は女の子だったからだ。後半、作家になった金子先生の次回作が『僕は落ち着きがない』だという場面がある。私が読んでるのは、それなのかもなあと思うとわさわさした。(枠物語が好きなので)

「皆、誰かに期待なんかしないで、皆、勝手に生きててよ」p.223

金子先生が望美に言う。なんだかいいなあ。からっとしている。健康的な感じがする。

あまりにダメすぎる自分の人生を投げ出したくなるし、リセットしてしまいたくなる。フェアリーゴッドマザーとかいないし、宝くじはそうそう当たらない。一発で、簡単に、華麗に、逆転なんてない。自分を生きるのは自分しかいない。誰も背負ってくれない。だから勝手に生きてていいよな。

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去年からずるずる読んでたのもまじってるけど、1月から思ったより本を読んだ!本を読むのは面白い。好きだ。本を読んでどうにかなるわけじゃないけど、どうにかするチカラや気持ちは得られることもある。

今年はどんな本と出会えるのだろう。

いろいろあるだろうけど、少しでもいいほうへ、惹かれるほうへ。そんなことを思う。

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