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6月上旬に読んだ本

「タイタン」野崎まど、講談社

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装丁とあらすじ、「今日も働く、人類へ」という青色箔押しのキャッチコピーが気に入り購入。お仕事小説になるんだろうな。他のとはだいぶ毛色が違うけど。“仕事”とは何かを考えていく物語。

読んだ後に、他の人がどう思ったのか気になり、出会ったのが上のエントリー。本に関わる仕事をされている方なので、「本を読むこと」と「仕事」について書かれている箇所がある。以下、引用。

これが「仕事そのもの」であっても続かなかったと思うが、逆に「100%趣味」でも15年も続かなかったかもしれない。これをやり続けることが、仕事にも関わってくるのだ、という意識が常に頭の片隅にあったからこそ、15年間も続けてこれているんだと思う。

引用部分の「これ」とは、「本を読んで感想を書くこと」なんだけど、仕事も関わってる部分があるから、ある一定の熱量でやれていると仰っている。

私はどうなんだろう、と考えた。ちょこっとだけ本に関係ある仕事をしている。もちろん仕事に繋がるかもってアンテナを張る部分がある。だけど、それがなくても、本を読んで感想をつぶやくことは前々からやっていたし、仕事にならなかったままでも、やっていたんじゃないかと思う。私ってなんで本を読んでいるんだろう?

そんな感じに思考が飛んでいった。どうでもいいことをふたつ書いて残しておきたい。先のエントリーでも言われていますが、これは映像で見たいし、たぶん映像を狙ってる(と思う)。あと、装丁ってやっぱいいなーと思って、装丁の仕事を、来世とかパラレルワールドとかでいいのでやってみたい。

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「急に具合が悪くなる」宮野真生子・磯野真穂、晶文社

めちゃめちゃよかった。本当に素晴らしい本。すごい本って、本がすごすぎて何言っても陳腐になってしまう。感動したでも足りなくて、魂が震えるって方が大げさでなく、しっくりくる。

「タイタン」を読んだ後に、この本を読んで、あー、これだから本を読むのをやめられないって思った。案外あっさり、安直かもしれないけど、ひとつ答えが出た。こんなに衝撃があって、自分の何かが丸ごと変わってしまうような瞬間があるのに、本を読むのなんかやめられるわけないんだ。出会わなかった前には戻れない。たぶん、ずっと取っておく本です。

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「パルプ・ノンフィクション」三島邦弘、河出書房新社

よく行く、くまざわ書店は地下一階にあって、エスカレータで下ると、(恐らく)売りたい本が面陳で並んでる。そこにあった本。本当に棚とかうまいことつくってあって、ついつい本を買わされてることが多い。これもそんな感じで、思わず買ってしまった。エスカレータで降りた先にあるなんて絶対目に入る。ずるい。

軽い文体で読みやすかった。京大の人の文体ってどうして、こうおもしろい人が多いんだろう。あと、気持ちがすごく伝わってくる本だった。最後泣いてたな、なぜか。

書店が減り続けている。本の点数と一緒で増えすぎていただけなのかもしれないけど。それでも閉店だと耳にするたび、やっぱりさみしい。書店で並んでいるからこそ、たまたま出会える本があることを知っているから。(この本もそう)本に関わる全ての人が少しでも幸せになれるよう、この本に関わる業界が変わっていってくれればいいな。FAXが現役で大活躍!が終わるくらいには変化していってほしい。

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「いち病理医の「リアル」」市原真、丸善出版

「ある病理医のリアル」の章がすごく好きだった。はなしが飛ぶけど、昔、ワンオクの「Nobody's Home」を聞いたとき、この曲好きだなあと思ったことがあった。曲ができた背景とか全く知らないけど、歌詞的にたぶん、めちゃめちゃ個人的な内容の曲なんだろうなーって思って。そこがすごく好きだと感じた。ひどく個人的なはずなのに、誰かの現実って、響くものがあるんだよなー。ほんと不思議。そういう章だった。

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「真夜中クロニクル」凪良ゆう、フランス書院

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凪良先生って、ほんと、めちゃめちゃ文章が美しいんだよなー!!!とても好き。美しい彼シリーズに通じるものがあるのかなって勝手に思いました。(設定とか関係性とかが)ことをいたすシーンもめちゃめちゃきれいだった。すごいなー。

そっちもつらいのだろうが、実際会いたくないと言われているのはこっちで、まず理不尽さが先に立ってしまう。(p.217)

お気に入りの一文。自分のことが大好きな奴に、急に距離を置こうと、それを申し訳なさそうにぼくが悪いんだ、と伝えられる場面で主人公の一人が思ったこと。なんだかめちゃめちゃわかるというか、まあ言われた側からしたらそうだよな、と思って、それがあまりにもぴったりな言い方で笑ってしまった。こういう不器用さというか、ちぐはぐ感、清々しいまでのすれ違いも凪良先生の魅力かと。

あと、凪良作品は、祈りにあふれてると個人的に思ってる。出てくるみんなが幸せで、健やかであってほしいと、読んだ後にそう思わずにはいられない。そこを含めてとても好き。今回のニーナと陽光も、たぶん色んな困難がこの先もある。勝手に思い合ってはすれ違って、また喧嘩をして、離れてしまうこともあるだろうけど、どうか二人が健やかに生きていてほしいと願ってやまない。

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