平大典「【対東京《バーサス・トーキョー》】Versus Tokyo」(8)
Ⅷ
負け犬の日々は終わった。
一年が経過すると、もうすべてが変化してしまった。
俺は確信している。神たる東京に俺は愛されているのだ。
東京にとって最高の東京少年。
羽田空港大一番の翌週、俺が書いた裏通りの悪童たちに関するルポタージュが第二圏極東文化賞の候補作品に選ばれた。一か月後には受賞決定、俺は新帝国ホテルで開催された授賞式で駄文を読んだ。その日の夜、葉霊と別れた。
東京の宵に参加する前の俺は、路傍の糞。太っちょ斉天大聖を殺すと改善、血生臭い薬売りを殺して伸びる。羽田空港大一番以後は、もはやこの世の春。
羽田空港大一番は、拾得だけでなく、俺にとっても転機だった。
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