【詩作】春
春、風のない朝を横切って
旅の途中の猫に噂された
陽射しの香りにじゃれあって
君の行方を尋ねたら
空っぽの空を 指差した
想像の果ては広がって
この街の彼方を見つけるためのスニーカーが
擦り切れていくのも 止められない
桜の花びらが ひとつ落ちたら
そこが新しい季節の 始発駅
君と僕の影が 気難しい顔して
傾いたなら、
うたかたを纏った風に 縛られて生きよう
着崩れた体温を感じながら
いつまでも
春、光の音を嗅いだなら
あの日の手紙の意味に気付けるかな
生きる道の途中で 忘れてゆくのは
此処は只の栞にすぎないから
空っぽの物語に 挟むための
想像の果ては止めどなく
この街のフレームに外れた世界の風景が
空疎な言葉だけで 色づいてゆく
桜の花びらが ひとつ落ちたら
そこが最後のページだと、笑おう
君と僕の影が 明日の方角へと
伸びたなら、
憧れを語った今日を
捨てて生きよう
感傷と革命のエゴイスト
僕らの生き様を横目に 過ぎる猫は、
旅の途中。