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CA界で一番恐れられているルート「インド」

CAにどこの路線が一番大変?と聞けば、外資日系問わず恐らく9割のCAが「インド🇮🇳」と答えるだろう。

インドに行ったことがある人や住んだことがある人に「インドのおもしろいはなし教えて〜」と無茶振りをしたら、すかさず2〜3エピソードくらい出てくるんじゃないかという程おもしろエピソードに事欠かないのがインドである。

とにかく奇想天外、日本人の常識を打ち破ってくるインド路線について今回は書きたいと思います。

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【1】お客様、トイレでお洗濯しないで下さい。

CAは空のウェイトレスと揶揄されることがあるが、ことインド路線に限っていえば、私は自信を持ってこう言う。
「いいえ、清掃員です。(トイレの)」

これは私の同期の話ですが、成田発のインド路線でのこと。
お客様から「トイレを待っているんだけど、全然開かない。」と声をかけられたそう。
どうやら誰かが中でお籠りしていて、トイレは10分以上占拠されていたそうで、同期のCAはドアをノックし「お客様、大丈夫ですか?」と声をかけた。
中からは「I'm Alright!(大丈夫〜!)」と元気な応えが返ってきたそう。

数分すると、おおきな白い髭をはやしたインド人のお客様が「ソーリーソーリー(ゴメンゴメン)」と言いながらトイレから出てきた。

長時間トイレを使用されていたので、ウンの可能性もあり、CAがトイレの清掃に入ると、

床も壁も鏡も洗面台も、トイレがすべてビシャビシャの水浸し状態だったのだ。

CAがすかさず「お客様、大丈夫ですか?!どうかされましたか?」とそのお客様に聞くと、ポタポタと水が滴り落ちる大きな布を手にしたそのお客様は、ご自身も若干濡れながら「これをね、洗ってたんだよ。」と言う。

ターバンだ。

本気か。

そのお客様いわく、洗面スペースは小さすぎる上に、水があまり出ないから、という理由で、トイレを流す時に使う水を利用し洗濯をされていたんだとか。トイレをフラッシュするたびにターバンから水がトイレ中に飛び散り、そしてずぶ濡れになったターバンを絞るたびにまたトイレ中に水が飛び散り、トイレはビショビショになったのだ。

お洗濯したそのターバン、ほんとうにキレイになったの?

トイレでお洗濯して清潔になるの?

そう心で呟きながら同期の彼女は手袋をはめ、泣きそうになりながらトイレ掃除をしたらしい。

ちなみにそのインド人のお客様は席に戻るなり、中央座席の列3席の背もたれを使いターバンを干していた。それは流石に他のお客様の迷惑になるので彼女は即、注意したらしい。

【2】黄色いおトイレ

これは先輩のお話です。

食事のサービスの後はトイレが混み合い、ペーパーが切れることがあるため、必ずトイレの清掃チェックをします。
サービス後、先輩がトイレの清掃チェックをするために扉を開けると、
強烈なアンモニア臭とともに若干きいろ、いや黄土色に汚れた壁が目に飛び込んできた。

トイレ、なんでこんなに臭いん?

なんで壁が黄土色に汚れて、しかも濡れてるの?

お腹の調子が悪すぎて誰かトイレで爆発でもしたの?と、先輩は本気で思ったらしい。

インドのトイレ事情を知っている方も多いと思うが、インドでは、トイレのすぐ横に蛇口がついていたり、水が入った桶が用意されていて、その水を使い左手でお尻をすすぐ慣習がある。

いや、聞いたことはあったけどさ。実際にまだやる人いるんだね!(しかも機内で)

機内のトイレの水はセンサー式なので、水を出しっぱなしにするには手を出し続けていないといけない。
努力はされたのでしょうが、きっと距離がある洗面台に手を伸ばしながらお尻をすすいだのでしょう。
きっと、そのお尻を拭いた手で壁を触ったのでしょう。
というか壁で手を拭いたのでしょう。
トイレットペーパーがあるのに「トイレでちょっとふいちゃおう」と思い、やってしまったのでしょうか。具体的にどうやってこの黄土色のトイレが造られたのかは、誰も知る由もないです。

黄土色のトイレの壁なんて今まで見たことがないし、今後見たいとも思わないけれど、
もう、なんていうか想像の遥かかなた上をさらに余裕で超えてくるインド、すごくない?!
このトイレ事件を機に、先輩はインド路線だけ英語とヒンドゥー語でトイレの使用方法を書いた紙をトイレに貼っているという。(ちなみにすごく効果的らしい。)

関係ないかもしれませんが、私はCAを始めてから、必ずトイレの座面のシートを使うようになりました。公共のトイレは誰がどんな風に使っているか分からないです。こんなご時世ですので、皆様もトイレの座面シート使うことをお勧めします。

【3】鋼のメンタル、インド人男性の食欲

食事のサービスの時は、客室の前方に座っているお客様から順番にお食事を配り始める。配るだけなら簡単だけれども、ミールのチョイス(いわゆるbeef or fish)を選ぶのに時間がかかったり、飲み物のリクエストがあったりと、客室の後方に進むまでは30分以上はかかる

ようやく全員にお食事を配り終えるかな?というタイミングで、CAの呼び出しコールが「ポーン」となった。コールを見てみると、客室の前方のお客様がCAを呼んでいる。

すぐに私がお客様のところに行くと、恰幅のいい中年のインド人男性のお客様が「I would like to eat my meal (食事をしたいんですけど。)」と言ってきた。

他のお客様を見渡してみると、みなさますでにお食事を終えている様子で、(やばい、彼にだけごはん配り忘れてる?!)と私はかなり焦った。
寝ている旅客には、起きてから食事が食べれるように、CAがちゃんとマークをしているが、時折CAのミスで、起きているお客様への食事の配布が漏れることがあり、大きなクレームに繋がるケースが多いのだ。
「You haven't recieved your meal yet? I am so sorry, sir! (お食事をお渡ししていませんでしたか?申し訳ございません!)」とお客様にお詫びし、すぐに配布を担当したCAに確認に行った。

担当したCAにすぐに状況を確認すると、
「え?あのお客様はお目覚めでしたし、お食事を確かにお渡ししました。もう召し上がり終わってるはずです。」と彼女は言う。

「そうなの?今ね、そのお客様から食事が食べたいと言われたんだけど。。もう一度確認してくるね。」と私はもう一度そのインド人男性の元へ確認に向かった。

私が申し訳なさそうに「お客様、本当にお食事はお受け取りになっていませんか?」とその男性に聞くと、お客様は満面の笑顔でなにも置かれていない座席のテーブルを指差しながら「え?うん、ほら、食事置いてないじゃん。」とおっしゃった。確かに、ほかのお客様の全員テーブルには食事のトレーが置かれているのに、このお客様は食事のトレーを持っていない。

でもなんで笑顔なんだ?と、その笑顔に疑問をもった私は、お客様の足元を確認した。すると、綺麗に食べ終わったミールトレーが座席下に隠されていたではないか。

驚きまじりで「お、お客様!このミールトレーどうしたんですか!」と私が聞くと、テヘペロと言わんばかりのテンションで「haha oh~ You found it!(ハハーあ〜見つかっちゃったかぁ!)」と笑いながら、足元のミールトレーを取り出し私に渡してきた。

彼は食事が1食では足らず、もう1食たべたいがために、自分が食べたトレーを隠し、おかわりを頼んできたのだ。
無駄な気力と時間を奪われ、まじで笑えなかった。

そしてその男性は懲りずにオードリー春日さんを彷彿とさせるニンマリ顔で「Can you bring more meal and iced whisky for me?(僕にもっと食事と、あとウィスキー持ってきてくる?)」と言ってきたのだ。
こ、コイツ〜。笑

「まだ後方キャビンのお客様はお食事を何も召し上がっていないんです。もし余りがあればお渡しできる可能性はありますが、まだわかりません!」とピシャリと言って、私はその場を去った。(ウィスキーはちゃんと持って行きました。)

食事をすでに食べたのに、その食事を隠して「もらってない!」と嘘をついた挙句、笑顔でおかわりが欲しいなんてよく言えるよなぁ、もうインド人のメンタル、鋼の強さじゃない?笑 日本人でそんなことできる人いる?!
(結局食事に余りがでたので、そのインド人男性は2杯目を笑顔でもりもり食べていた。なんか不思議と憎めないんだよな。。。笑)

【4】まだまだあるインド路線あるある

ベジタリアンの特別食を予約していないのに、べつのお客様がベジタリアンミールを食べているのを見て「僕もあれ食べたい。」と突然言い出す。「事前にベジタリアンの食事を予約して頂かなければ、用意ができないのです。」と伝えると「僕、オーダーしたよ。」とあからさまな嘘をつく。笑
(「してないですよね?」と念押ししても「したよ。笑」とあざとい笑顔で答える。)

インド人が「YES」と言いたい時は首を傾けるように振る。(もののけ姫にでてくるコダマの首振りの動きがまさにソレ)そして「NO」の時も似たように首を振る
なので飲み物をリクエストされた時も、「氷をお入れしますか?」と聞くとインド人は首を振り、どちらか分からないので「それはyesですか?」と聞くと「いや、NOだよ。笑」と答えられたりする。
(↓参考までにこんなビデオもある。なんとこの首振りは無意識でやっているのだとか!笑

*インドでは「人は迷惑をかけるものだ、だから自分も人の迷惑を許しなさい」と教えられる。

インドに駐在している社員の方が教えてくれた言葉です。

日本人だったら、
「こんなことしたら、他の人にどう思われるかな?」
「迷惑がかかってしまうから、これはやめておこう。」

とつい考えてしまいがちではないですか?
小さい頃から「人に迷惑をかけるな!」と教えられてきたし。
特にCAの世界は、とにかく人に気を遣う仕事であり、『迷惑かけない・かけている人がいたら是正するセンサー』が高感度で働いていたから、
このインドの教えは眼から鱗でした。

人の迷惑を許せなんて、器が大きい素敵マインドじゃないですか?

そう思うと、機内の想像を超えるインド人のお客様の態度にちょっと納得。きっと誰も悪気もなく、自分の生きたい様に人生を生きている。機内でも自然体で過ごしたい様に過ごしているんだ、と。

*色々書いたけど、私はインド路線が好きです。

色々書いて説得力のかけらもないですが、私は個人的にインド路線が好きです。よく、インドに旅行すると「インド大好きになる派」と「インド二度と行かない派」に別れるって言いますよね。

私はインド大好きになった派閥で、プライベートで2回も行きました。そのうち1回はインドに1ヶ月住みました。(これについてはいつか別の記事を書けたらな、と思います。)

他の路線(特にニューヨーク・ロンドン線とか、国内線だったら伊丹・福岡線)は、ビジネスで利用される方が多く、機内の雰囲気がピリピリしていて、お客様も飛行機に乗り慣れているためCAに対して厳しい目を持ってる。CA自身も、お客様から常に見られていると思いながら、緊張感を持って仕事をしています。

でもインド路線は奇想天外なことが多すぎて、とにかく丁寧さというよりも、瞬発力とか、肝っ玉とか課題解決能力が求められる。色んなことが発生するけど、お客様がおおらかだからか、何かあっても絶対に怒らないし、クレームにも発展しないのです。

びっくりすることが多いけれど、どこか憎めなくて、おもしろいネタを常に提供し続けてくれるインド、私は好きです。

↑ 見たことない人がいたら絶対見るべき!インド映画『きっと、うまくいく』おすすめです。

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