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ぼかし肥や堆肥の発酵促進には納豆菌が最強。だけど、市販の納豆は大丈夫なのかな?

 前回の記事で納豆菌と乳酸菌を同時に振りまいたらどうなるかについて書きましたので、今日はこの2つの菌について、もう少し深掘りさせていただきます。

納豆菌最強説

 以前から私はいろんな堆肥つくりに挑戦して来ましたが、発酵をスタートさせる時に「納豆菌は無双である」という結論にたどり着きました。納豆菌のすさまじい発酵力を身に染みて感じてるんですよね。(^^)

 我々は納豆菌と便宜的に呼んでいますが、分類上は納豆菌という菌はおらず、もともとは枯れ草や稲わらなどにくっついている枯草菌 (好気性のバチルス属細菌) の仲間です。たった一本の稲わらに1000万個もついているといわれるほど自然界ではポピュラーな菌ですが、分裂スピードがとにかく速くて、30分ごとに倍増し、16時間で1個から40億個にまで増殖します。
 しかも、この菌は環境が悪くなると芽胞(がほう)になってしっかり身を守ります。芽胞の状態になると乾燥にも熱にも非常に強く、±100℃の過酷な環境にも耐えますし、酸にも滅法強い。栄養源なしで100万年以上生き延びるだろうとも、宇宙空間でも生き延びるだろうとも推測されています。
 日本酒を作る酒蔵の杜氏さんは、麹菌が納豆菌にやられるから朝納豆を絶対に食べないという話は有名です。ちなみに、愚息3号とこの話をしていたら、ヤツの通う大学院でも細菌などを培養するラボへは、朝食にうっかり納豆を食べてきた学生は立ち入り禁止なんだそうです。

 そんな納豆菌は発酵をスタートさせる時にはとにかく無双。米ぬかとペアで使えば、落ち葉や籾殻などの少々C/N比が高い素材でもなんのそのなんですよね。www 
 ま、自然界には目に見えない菌がそれこそものすごい種類存在していますので、素材に米ぬかを混ぜて積んでおくだけで、ほぼ間違いなく発酵するのですが、増えてほしくない雑菌も繁殖しますので、時には腐敗してしまうこともあります。そこで活躍するのがこの納豆菌。持ち前の爆発的な繁殖力で他の菌を駆逐して、あっという間に70℃前後まで発熱しますので、時間短縮もできてとにかくこちらとしてはものすごく助かるんですよね。

 前回の記事の繰り返しになりますが、ぼかし肥料を作る方法をググってみると、麹菌や乳酸菌、イースト菌などと納豆菌を混ぜて使うレシピがたくさん出て来ますけど、圧倒的に納豆菌が強くて、他の菌の増殖を抑制してしまうという観察結果もありますので、このことからも他の菌を混ぜることにはあまり意味がないのではないか?と私は考えています。

毎日食べる納豆パックの容器を洗って集めた納豆のネバネバ液をかけるとすぐに発酵する。

乳酸菌も実は自然界にたくさんいる

 様々な乳製品に欠かせない乳酸菌ですが、実はこれもまた自然界にたくさんいるんですよね。ぬか漬けの桶の中なんて、いつの間にか乳酸菌だらけですし、滋賀県名産の鮒ずしも乳酸菌発酵です。
 たとえば、米のとぎ汁は何も手を加えなくても、そのまま数日ほど置いておくと自然に乳酸発酵が始まってガスが発生し出します。(砂糖と塩をひとつまみずつ入れるとなおよいらしい。)
 乳酸菌は空気があってもなくても活性化しますが、嫌気条件でより活動が活発になります。発酵が進むと下の画像のようにペットボトルの中に乳酸菌の塊ができてきます。この方法だとわざわざヨーグルトや乳酸菌飲料を買ってきて材料に混ぜなくてもいいし、何しろ植物由来の乳酸菌だしこれはとても嬉しいです。

米のとぎ汁はそのまま置いておくと自然に乳酸発酵が始まる。

手軽で大変ありがたいんだけど、よく考えると…。

 というわけで、私にとって納豆菌と乳酸菌はとてもありがたい存在ですので、毎日食べる納豆のネバネバ液を納豆容器を洗って集め、米のとぎ汁も流さずにペットボトルに保管しては乳酸菌発酵させて使っているのです。

 でもね、ここまで書いてふと思ったのですが、最近の納豆や乳飲料の業界ではとにかく差別化された商品の研究開発にしのぎを削っておられますよね。スーバーの棚には匂わない納豆、ご飯と同じ柔らかさの納豆等々、他にも様々な特徴を持った納豆が並んでいますし、ヨーグルトや乳酸菌飲料も腸まで届くとか、精神的ストレスの緩和だとか、睡眠の質向上をうたう商品がたくさんあります。これらの製品開発で最も大切な工程は、バイオテクノロジーを駆使した菌の育種改良です。

あれ?ちょっと待てよ。そんなもの畑に入れてもいいのか?

 研究室で人工的に開発した菌を畑に投入することはどうなんでしょうか?食べても無害なんだから平気?自然淘汰されるから大丈夫?私の心配のしすぎでしょうか?
 うーん。どうなんだろ?特に納豆菌は何しろ最強ですからかなり心配です。自然界に解き放ったら、それこそ回収不可能まちがいなしですやん?

 有機農法でもオリジナルのぼかし肥や堆肥を作ってるよな?自然栽培でも自作の堆肥使ってなかったっけ?みなさん、ぼかし肥や堆肥を作るときに市販の納豆や、ヨーグルト、乳酸菌飲料を混ぜてませんか?それって、ちょっと考えた方がいいかも知れませんよ。
 もし納豆菌の力を借りたいなら、材料を仕込むときに枯れ草や稲わらを少し入れたらたぶん充分に用が足りるし、乳酸菌は前述の通り米のとぎ汁で天然物がいくらでも増やせますから。

断っときますけど、
私は決して意識高い系農業者ではありません。
どちらかというとええ加減。
でもね、あえて言わせてください。

納豆菌も乳酸菌も自然の中にいっぱいいるんです。
みなさんそっち使いませんか?


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