2年ぶりの開催でリアルイベントの楽しさを再確認『TOKYO SANDBOX 2022』
2022年4月23日、24日にインディーゲームの展示イベント「TOKYO SANDBOX」が秋葉原ベルサールにて開催された。
感染症の拡大の影響で2年のブランクがあったものの、2022年はリアル会場で以前と同じように開催。とはいえ、感染症は依然として猛威を振るっている状況のため、マスク装着必須で出展者には試遊後のコントローラーの除菌を求めるなど前回とまったく同じとはいかない。それでもリアル会場で開発者や友人と交流しながら体験する場は楽しいものだと再認識できた。筆者は4月23日に参加。イベントでは出展されているゲームの試遊ができたので、いくつか気になったタイトルをご紹介しよう。
単なるマイアミフォロワーに終わらない工夫が光る『SONOKUNI』
ヒップホップグループ「DON YASA CREW」がゲーム開発から音源制作まで手掛けるトップダウン型アクションゲーム。タイトル画面やゲーム画面からして、インディゲームの地位向上に大きく貢献した2012年の傑作『Hotline Miami』そのままでギョっとしてしまったが、試遊させてもらうとフォロワー作品という先入観を吹き飛ばす出来の良さに驚かされた。
敵の猛攻や一瞬の判断が死につながる緊張感、さらにはクリアできた時の爽快感まで含めて『Hotline Miami』のプレイ感覚なのだ。『Hotline Miami』のフォロワー作品は世界中に存在するが、プレイ感覚までコピーできている作品は稀有だろう。コピーにとどまらず、そこにスローモーションやガード、敵の攻撃を跳ね返すといったオリジナル要素が加わっているため、プレイ感覚は似ていてもゲームとしては別物となっている点も特筆すべきだろう。完成したバージョンに期待したい一本だ。
シンプル操作でハードなアクション『NINJA or DIE』
「NAO GAMES」によるCOOLなNINJAのアクションゲーム。移動も攻撃もジャンプのみで完結するため、マウスのみでの操作も可能なシンプルなゲームだ。とはいえ、プレイ中の画面は非常に賑やか。派手なエフェクトや忍者の多様なアニメーションによって難しい操作をしているかのような錯覚を覚えさせることに成功している。ジャンプでぶつかることが攻撃となり、攻撃を連続してヒットさせることでコンボボーナスがつく仕組み。シンプルであっても決して簡単なゲームではなく、流麗なプレイができるようになるまでにはそれなりの練習は必要なゲームと感じた。
カワイイと思ったらちょっとコワい・・・『A SHORT FAREWELL』
東京を拠点にゲームや音楽、デザインなど多方面で活動しているYanhe Wang氏によるプラットフォーマー型アクションゲーム。ネズミの主人公が亡くなった祖父母に会うべく深層心理を調査する、といった設定らしいのだが、登場する敵キャラクターのデザインが不穏で異常。人間の足が生えているサメ、ヘリコプター型の豚、ブリキのおもちゃのようなカエル、うんち(?)を投げて攻撃するウサギなどカワイイビジュアルからは想像しにくいキャラクターの数々に驚いた。プラットフォーマーとしても絶妙なレベルデザインで歯ごたえのある難易度だったりと、作品世界も含めてどことなく2014年のインディ作品『ケロブラスター』を想起させる作品だ。デモ版がitch.ioにあるので、気になる方はプレイすることを勧める。
同じ道を歩いていても見ている風景は違うのかもしれない『違う冬のぼくら』
『おわかれのほし』『ひとりぼっち惑星』などで知られる個人開発者のところにょり氏による2人プレイ専用横スクロールパズルアドベンチャー。少年2人を操作してパズルを解きつつゴールを目指す途中で、独力では突破不可能な場面が頻発する。たとえば、一人分の重さにしか耐えられない脆い橋の先に崖を登る足場に必要な箱があったとする。この場合は、片方が下から支えている間にもう片方が箱を運ぶといった連携が必要になる。2021年のGame of the Year受賞作品『It Takes Two』に似たゲームデザインと言えばわかりやすいだろう。
本作が先行する2人プレイ専用のゲームと異なるのはその作品世界にある。そもそも主人公の家出少年たちはどこへ向かっているのか?彼らはなぜ家出したのか?その疑問の答えは体験版にはない。更に謎を呼ぶ体験版の最後で描かれた「別々の風景」の存在。2台の端末で試遊していたが、体験版のラストでは隣の端末とはアートワークが異なる画面になっていた。これがどういう意味なのか、物語がどう展開するのかが非常に気になる。今回のイベントで試遊したものの中では、体験版としてのフックが最も強い作品だと感じた。すでにStemのストアページが作成されているため、ウィッシュリストに入れて完成を待ちたい。
2年ぶりの開催は素直にうれしいが、気になる点もある
今後注目したい作品も多くイベント自体は充実していたものの、出展者の数が限られているためか、会場は前回よりも小規模でやや手狭に感じた。前回は再入場の際にはリストバンドを提示する仕組みになっていたが、今回は受付で渡される紙を提示するスタイル。一度チケットを購入すると2日間使えるというものだが、紙一枚だと紛失や誤って捨ててしまう人もいるのではと思ってしまった。
上記のように少々気になった点はあるものの、やはりリアルイベントの存在はうれしい。世界最大のビデオゲームイベントE3が2022年は開催中止、昨年の東京ゲームショウやBit Summitは一般観客の入場が制限されてしまうなど、誰もが楽しめるお祭りとしてのゲームイベントが減っている印象があっただけにどのような形であれ、開かれたゲームイベントの存在は歓迎したいものだ。
ゲームイベントはゲームの見本市としての機能だけでなく、ゲーマーと開発者や来場者同士の交流の場としての面もある。開発者にとっては遊んだ人から得られるフィードバックが開発のモチベーションやゲームのクオリティを向上させる効果があるだろうし、ゲーマーにとっては新たなゲームに触れる喜びを得て開発者へのメッセージを直接伝えられる貴重な場だ。現在の世相ではイベントの運営は困難だとは思うが、こうした場の存在が多様なゲームの開発を促進し、ひいてはインディゲームシーン全体の盛り上げに繋がるだけに来年の開催にも期待したい。