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0825_土の香

【140字小説】
夕暮れにヒグラシが鳴く。動かなくなってしまった小さなくわがた虫のメスから土の匂いがした。夏の暑い土の香。「さよなら」命の喪失に娘が泣いた。せめてと、その骸を庭に埋めて小さな土の山を作る。娘が自分の宝物の透明なビーズを一つ乗せた。夕焼けの赤がそれを照らし、命の炎が確かにそこにある。

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