2024年は、ウエルビーイングを研究!ウエルビーイングと私たちは出会った
2024-01-28
ここ数年、「ウエルビーイング」という言葉をよく耳にするようになったなぁと、思われる方は多いと思います。この注目度の高まりは、働き方改革等の潮流を意識して「ウェルビーイング経営」を取り入れる企業が増えていることなどにもあります。
私の勤め先である建設業界には「WELL認証」という建物の内外の環境などを評価するシステムがあります。この認証は、建物が人の健康とウエルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好であること)についての影響をさまざまな角度から評価するユニークなものです。評価項目は、建物の衛生設備・空調設備に関する空気、水、温熱快適性などと、建物という「場」とヒトの状態・関りを表す”こころ、コミュニケーション、イノベーション”などがあります。この認証を知った時には、これからの建物はこんなにも”ヒト中心”に、より快適になるんだなぁ~、そんな建物で仕事をしたい!と思ったものでした。2018年頃の事です。
今では、”ビルOS(オペレーション・システム)”という言葉も生まれ、建物はセンシング技術から得たデータでより快適な空間をつくり、スマホのように各種の機能的なアプリでアップデートを続けるという、不動産の減価償却とは真逆の、データによる価値蓄積の時代に入り始めました。
野村総合研究所が2022年に出版した『デジタル増加革命』には、DX時代の減価償却社会と増価蓄積社会についての考え方が詳しく書かれています。
WELL認証でウエルビーイングに出会ってから、5年近く経った今年。
ウエルビーイングはますます身近に、そして、多岐に渡り使われるようになっています。
そこで、”2024年はウエルビーイングを研究!”といった、ちょっと大きなお題を付けて、学んだことや書籍などの紹介、そして、私生活でのウエルビーイング実証実験をまとめていこうと思います。
1月も残り少なくなった28日。取り敢えず、第一弾が書けてよかったです!!
今年1年、不定期ではありますが、ウエルビーイングについてを投稿して参ります。お付き合いを、よろしくお願い致します。
1.「世界保健機構(WHO)憲章」に登場すた”ウエルビーイング”
ウエルビーイングが初めて言葉として登場したのは、「世界保健機構(WHO)の憲章」です。世界保健機構(WHO)の憲章は、1946年7月22日に
ニューヨークで61か国の代表により署名され、1948年4月7日より施行されました。
設立者の1人である施思明(スーミン・スー)博士が、「予防医学(病気の予防・治療)」だけでなく、「健康促進」について盛り込むよう提案したからだといわれています。
その訳を、公益社団法人 日本WHO協会より引用します。
憲章全文の一部、ウエルビーイング(Well-being)の箇所を抜粋は以下になります。
こころと身体のウエルビーイング
先の大戦では、人を殺したり、目の前で人が死んで逝ったりと、多くの人々が、恐怖や憎悪、悲しさや辛さなどを日常で経験しました。そんな体験を持つ人々の健康とは、肉体的にも精神的にも、そして社会的にも、全てが満たされた状態であり、病気や病弱な状態という定義でけでないと伝えているように私には感じます。
そして、戦後に登場したこの「ウエルビーイング」は、なぜ今、世界で注目が高まっているのでしょうか?
それは”ボジティブ心理学”の登場に関係すると、私は考えます。
2. ボジティブ心理学
「ボジティブ心理学」は1998年に米国心理学会会長となった、ペンシルベニア大学心理学部教授のマーティン・E・P・セリグマン博士によって発議、創設されました。創設から26年と、未だ新しい学問です。
セグリマン博士は「学習性無力感」と呼ばれる現象の研究に取り組んでいました。その事象とは、行動を起こすたびに電気ショックの痛みを受け、どんなにあがいてもその痛みから逃れられないと学習した犬が、次第に行動そのものをあきらめるようになる、というものです。こうした犬は、ショックから簡単に逃れる手段が用意されていても、ただ悲しげな声をあげながら無気力な表情で、ショックに打たれるままに耐え忍んでいました。
この学習性無気力感を「単極性うつ病」、つまり、そう病のないうつ病のモデルと提唱しました。この研究を重ねると、どんなに辛い状況を与えてもけっしてあきらめない人や、そのような状況に陥った経験などないのに最初から無気力な人などさまざまな事実を目撃しました。
無気力感に屈しない人たちがもつ弾力性のある強さは、どうやって備わったのか?
問題が起こる最初の時点で、既にあきらめてしまう人はどんな人か?
そのようなことを研究し始めたという訳です。
ポジティブ心理学の定義は、「私たち一人ひとりの人生や、私たちの属する組織や社会のあり方が、本来あるべき正しい方向に向かう状態に注目し、そのような状態を構成する諸要素について科学的に検証・実証を試みる心理学の一領域である」、とされます。
そして、米国心理学会は設立1892年のアメリカ最古で最大の心理学者の団体で、会員数約15万人、年間総予算7千万ドル(約80億円)に及ぶそうです。目的は「科学および職業としての心理学、そして健康・教育・福祉の増進の手段としての心理学を進展させること」だそうです。
3. 日本政府とウエルビーイング
・2021年「骨太の方針」に登場したウエルビーイング
ウエルビーイング(Well-being)は、2021年6月に公表された政府の成長戦略「骨太の方針」に初めて登場しました。そして、各基本計画等には、Well-beingに関するKPIを定めることが示されました。これは、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)の取組みの一環として位置づけられたことを意味します。つまり、政策評価において、経済効果だけではなく、国民の幸福度に与える影響を考慮し、政策立案・推進していくとの考えが示されたのです。
EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)とは、政策の企画をその場限りのエピソードに頼のではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものと定義されています。
私たち国民のウエルビーイング(幸福度)を維持向上するために、ウエルビーイングに関する「満足度・生活の質に関する調査報告」も行われています
「満足度・生活の質に関する調査報告書」は、2019年5月に内閣府が開始したもので、2021年から副題に「我が国のWell-beingの動向」が追加されました。
▼以下は、2021年の調査報告書の目次です。
第1章 満足度・生活の質の動向
満足度の全般的な動向
社会とのつながり
家計・雇用環境
健康・その他
第2章 Well-being に関する指標群
内閣府「満足度・生活の質に関する指標群」の改定
諸外国・地方公共団体の指標群
・満足度は、以下の13分野において生活の質に関し調査しています。
下は、主観的Well-beingについて、日本と欧米と指標を分析したものです。
Well-beingとエビデンスについて興味深い報告がありましたので、ご紹介しますね。
イギリスでは、医療・ヘルスケア、教育、地域経済の活性化、子どもの福祉などの各分野においてWhat Works Centreという官民共同組織が設立されています。What Works Centre Wellbeingは、そのWhat Works Centreの一つとして2015年に設立され、どのような取り組みがウェルビーイングの向上に有効なのかについての研究や、そのエビデンスの共有、知見を活用したアドバイスなどを行っています。そのエビデンスにより、政策を企画しているのです。
日本は、イギリスのこの政策をEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)の先進事例と捉えています。
イギリスで本格的な EBPM の導入を始めたのは、労働党のブレア政権(1997 年-2007 年)ですが、2010 年の保守党への政権交代後もエビデンスに基づく政策形成は継承されているそうです。
ご紹介したコラムに書かれた事例には、強く納得できますね。
(事例)
・従業員を効果的にサポートするリーダーを育成することで、管理職と従業 員の両方の Well-being が向上する
・健康的な生活と Well-being を促進す るプログラムは、自己申告による健康状態や生産性を向上させ、欠勤を減らす ことができる
・「第6期科学技術・イノベーション基本計画書」にも登場
更に、内閣府が掲げる、技術分野の2021年~2025年度の計画である「第6期科学技術・イノベーション基本計画書」にも、Well-beingが登場します。
それは、
『一人ひとりの多様な幸せ(well-being)と課題への挑戦を実現する教育・人材育成』です。
一人ひとりの多様な幸せ(well-being)を実現できる社会のため、具体的に以下のような実現を目指しています。
・誰もが能力を伸ばせる教育と、それを生かした多様な働き方を可能とする
労働・雇用環境の実現
・人生100年時代に生涯に渡り生き生きと社会参加し続けられる環境の実現
・人々が夢を持ち続け、コミュニティにおける自らの存在を常に肯定し活動できる社会の実現
4. 一人ひとりの多様な幸せ=well-being
少子高齢化の日本では、2024年の平均年齢は50代になるそうです。
そんな中、来年2025年から、企業の定年は65才までが義務化となり、現在よりも定年が5年延びることになります。
先んじて2021年4月にスタートした”70才定年の努力義務化”は、大企業を中心に始まっています。
勿論、60才で自主的に定年を迎えることは可能ですが、勤めを辞めても、そうでなくとも、生きている間は、社会といい関係で繋がっていたいものですよね。
この「一人ひとりの多様な幸せが実現できる社会」を目指し始めた日本では、核家族が一般的な中で、勤め先では祖父母と孫といった年齢差の同僚たちと生産性を上げて行く、多様性を重視した仕事が求められる環境になっていく事でしょう。
年齢や性別や役職など関係なく、お互いに相手を尊重し合いながら、自分のウエルビーイングを大切に生きていく事が、社会性を高めるような気がします。
そこで、”2024年はウエルビーイングを研究!”といった、ちょっと大きなお題を付けて、学んだことや書籍などの紹介、そして、私生活でのウエルビーイング実証実験をまとめていこうと思います。
2025年の今頃、私はウエルビーイングについてどんな価値観をもち、
どんな生活習慣を身に付けているのか?身に付けられなかったのか?も
検証して参ります。
不定期とはなりますが、お付き合いをどうぞよろしくお願いします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
≪参考≫
・書籍『デジタル増価革命』著者 此本 臣吾 (監修), 森 健 (編集)
・公益社団法人日本WHO協会:https://www.japan-who.or.jp/about/who-what/charter/#:~:text=世界保健機関(W,が発生しました。
・起業前に「ウェルビーイング経営」を学ぶ理由_20240501:
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/mizuhosmartportal/jigyosenryaku/topic_120.html
・一般社団法人 日本ポジティブ心理学会
https://www.jppanetwork.org/what-is-positivepsychology
・書籍『ポジティブ心理学が教えてくれる「ほんものの幸せ」の見つけ方』著者:マーティン・セリグマン, 訳:小林裕子
・アメリカ心理学会 - Wikipedia
・2021-11第一生命研究レポート「2021年「Well-being変革元年に!」」
第一生命研究所 QOL・ハピネス戦略TF長 丹下博史
:https://www.dlri.co.jp/files/dlri/174303.pdf
・内閣府におけるEBPMへの取組
https://www.cao.go.jp/others/kichou/ebpm/ebpm.html
・満足度・生活の質に関する調査報告書 2021~我が国の Well-being の動向~_2021年6月
:https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/manzoku/pdf/report05.pdf
:【概要版】 https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/manzoku/pdf/summary.pdf
・内閣府:第6次 科学技術・イノベーション基本計画_20210326
https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/6honbun.pdf
・Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ<中間まとめ>20211224
:https://www.mext.go.jp/content/20220124-mxt_kyoiku02-000019798_2.pdf
・Japan Local Government Centre ADレポート「ウェルビーイングを数値化し、政策の指標とする英国の取組み」_20210921:https://www.jlgc.org.uk/jp/ad_report/wellbeing/
・(一財)行政管理研究センター:イギリスにおける What Works Network、Trial Advice Panel、Evaluation Task Force を中心とした政策形成・評価の取組に関する調査研究_202003:
:https://www.soumu.go.jp/main_content/000809662.pdf