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月の輝く真夜中のこと。
みつきに寝癖がついていた。
きっと不意に目覚めたのだろう。
三日月のようだとからかってみた。
彼女は恥ずかしそうに微笑む。
みつきが不意に外を指さす。
満月が見える。
満月が見えるだけなのに。
満月に何かがついている。
寝癖のように。
月の輝く夜に寝癖がついているように見えたのだ。
ふと振り返ると、みつきはいなくなっていた。
もう一回、寝たのだろうか。
みつきの名を呼ぶ。
他の人間を起こさぬように。
一部始終を見ていた人物がつぶやいた。
「みつきなんて、いないよ?」
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