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「ホリー・ガーデン」のグリンピースごはん

本日の一冊


あらすじ


果歩と静枝は高校までずっと同じ女子校だった。ふと気づくといつも一緒だった。お互いを知りすぎてもいた。30歳目前のいまでも、二人の友情に変わりはない。傷が癒えない果歩の失恋に静枝は心を痛め、静枝の不倫に果歩はどこか釈然としない。まるで自分のことのように。果歩を無邪気に慕う中野くんも輪に加わり、二人の関係にも緩やかな変化が兆しはじめる……。心洗われる長編小説。

本日の一皿


ぽってりとした厚手の茶碗にグリンピースごはんが湯気をたてている。

グリンピースごはんは静枝のいちばん好きな食べ物だった。

ホリー・ガーデン グリンピースごはん より

感想


果歩は静枝の不倫の恋に釈然としない。
それは、静枝のことを大切に思う気持ちの裏返しのよう。
現に、静枝が芹沢との逢瀬を終えるたび「のろけ」と称し会いに来るのを静枝のいちばんの好物である「グリンピースごはん」をつくってまっている。ほかの友達との先約をキャンセルまでして。
それは果歩から静枝への不器用な抱擁。
静枝も静枝で、「のろけ」といいつつも、少なからこの恋に疲弊ている。
しかし、自分は不幸ではない、自分は幸福であると証明するため、不安な気持ちを落ち着かせるため「のろけ」を口実に果歩に会いに行く。
お互いがお互いを大切におもっている。しかし、長い月日がそうさせたのか相手に対し素直でいられない。

この本は江國香織さんのあとがきにすべてがつまっている。

余分な時間ほど美しい時間はないとおもっています。
余分な時間ほど美しい時間はないとおもっています。
そうして、これはたくさんの余分な時間を共有してきた二人の物語です。
二人と二人をめぐる人々の、日々の余分の物語。

なんと美しい言葉だろうか、ため息がでる。
現代はタイパだ、時短だ、と、
無駄のない≒余分のない ことが良しとされているけれど
どこか味気ないと思うのはじぶんだけだろうか。

「 余分な時間ほど美しい 」

まさに。
人生の余分な時間を味わえるくらい、余裕のある人間でいたいものです。

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