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「銀河鉄道の夜」を読んで感動した話
こんにちは。
今日は雨が降りそうで降らないどんより曇り空。
長袖一枚では肌寒く、11月らしい季節になってきました。
今回は先月から読んでいた宮沢賢治「銀河鉄道の夜」の読書感想文。
きっかけは9月に月山と鳥海山に登るために東北へ足を運んだ時。
せっかく岐阜から山形まで来たのに山だけではもったいないと思い、鳥海山から下山して酒田市美術館に寄った。
そこでは絵本作家の黒井健さんの展示があり、閉館まで45分ほどだったが駆け足で観た。
僕はローカル美術館が好きでなるべく全文章を読むようにしていて今回もすべての文章に目を通した。
その中で印象に残っていたのが黒井さんが宮沢賢治の作品に感銘を受けたという。
「『銀河鉄道の夜』を初めて読んで、内容はよく分からなかったが、自然と涙が出た。」
(※確かこんなような書き方)
それを見て「銀河鉄道の夜」を読んでみようと思い、東北から帰ってきて手に取り読書の秋を飾る1冊とした。
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まず驚いたのは、いわゆる文庫本の「銀河鉄道の夜」は1つの長編ではなく複数の短編から構成されており、そのトリを飾るのが「銀河鉄道の夜」であったこと。
「おきなぐさ」に始まり、「双子の星」「貝の火」「よだかの星」「ひかりの素足」などの独特な世界観の短編も短いながらも読みごたえがある。
そこで気づいたのは、宮沢賢治は星に対してこだわりがあったのだろう。
そして「銀河鉄道の夜」にたどり着く。
あらすじ
主人公の少年ジョバンニが学校の授業で「天の川を構成するものは何か」という問いに答えられないところから始まる。
ジョバンニは母親のために朝夕は働いている。そんなジョバンニを同級生たちは小馬鹿にしているが、友人であるカムパネルラは同級生に混じり気の毒そうにしている。
祭りの夜にさみしくなってジョバンニは丘の上へ駆け上がる。
丘の上で星空を眺めると「銀河ステーション、銀河ステーション」という声がして目の前が明るくなる。
気がつくとジョバンニは列車に乗っていた。
そして隣にはカムパネルラが座っていた。
ジョバンニとカムパネルラは星空のなかで様々な景色と人と出会い旅をしていく。───
読み終えた感想
「銀河鉄道の夜」を読み終えて、正直内容や言葉が難しく1度ではほとんど理解できなかった。
だが、「銀河鉄道の夜」の結末は衝撃のもので、すべてを読み終えた時の余韻がいつまでも残っていた。
黒井さんの言っていたことが理解できた。
そしてすぐにもう一度読みたいと思い2周目に入る。
2周目を完了して感動した。
あれだけ難しいと思った話がすんなり入ってくる。
それだけではなく事の結末を暗示するような描写もあり、「うわぁそういうことだったのかぁ」と思わず唸ってしまうほど。
ジョバンニは様々な人と出会う中で感情の起伏が激しい。
さみしくなったり、かなしくなったり、笑ったり。
そういうところは年相応の男の子と思うと同時にこれから現実で起こることの予感を鋭く感じていたのかもしれないと思った。
特に銀河鉄道の旅の終盤、つまりは現実に戻る直前はジョバンニとカムパネルラで見ている景色が食い違っていた。
あの時すでに二人の行く道は分かれていたのだろうと感じた。
ジョバンニとカムパネルラは昔は家に遊びに行くくらいに仲が良かったが、今では少し距離があったのは祭りの直前にジョバンニが同級生たちとカムパネルラと会った時の反応を見れば分かる。
最後の結末を読むと、ジョバンニが体験した銀河鉄道の旅はそんな2人の関係の埋め合わせだったのかもしれない。
そして宮沢賢治の景色に対する表現が卓越している。
特に綺麗なものに対する比喩が僕では想像もしないもので天の川銀河という美しく我々では分からない世界の表現が本当にそういう世界なんだと思わせてくれる。
そういった文章表現もこの作品の楽しいところである。
数十ページの短編だったが本当に心に残る名書だった。
また宮沢賢治の他の作品も読んでいきたいな。
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