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尻馬に乗る:Anizine

「尻馬に乗る」というのは最近あまり聞かない表現ですが、ソーシャルメディアで行われていることは、まさにこれだとしか言いようがありません。

まず誰かが何かを投稿します。反応が多いのは恋愛や子育てなど、誰もが意見を言いたくなるトピックですが、発言に数ナノメートルの隙間でも見つけようものなら、ゾンビの大群が襲いかかってきます。

「今日は妻が仕事なので、私が子供の保育園に迎えに行ってあげた」

こんなのは40センチくらいの隙間がありますから、瞬殺です。

「行ってあげた、ってどういうことですか。父親として無責任ですね」
「奥さんがやって当たり前だと思ってる昭和人間ですね。古っ!」
「たまに迎えに行ったからって偉そうにすんなや、ボケ」
「プロフィールに自由人と書いてますけど、自由をはき違えてるやん」
「保育園の他の子の顔が写っていますけど、許可取ってますか」
「学歴とか会社の名前を自慢げに書いてて痛いです」
「そのパンツ、ユニクロですよね。ププッ」
「自分の家は保育園に入れたというマウントですよね」

これくらいは6分以内に来ますね。芸能人などでなくても何かを発信すれば誰にでも必ず矢は飛んできます。アーチェリー部みたいに皆が的を探してギリギリと弓を絞って待っているのです。

私たちはパソコン通信の時代からネットに触れてきましたが、昔とは違う防御法を編み出さないと安全に生きていけないことがわかりました。以前は完全におかしなことを言っている人に「誰でも納得のいく矢」が飛んでいったのですが、今はそうではありません。ごく普通の言葉にも、どんなに性格のいい人にも「マザー・テレサ、あいつムカつく」みたいに矢が飛んでいくのです。恐ろしいです。『一億総アーチェリー部』と言えましょう。では、的にならないようにするにはどうすればいいのでしょうか。

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。