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計画した時間に街の入口へ:写真の部屋・Anizine

色々ありましたが、東京に戻りました。

今回はスケジュールの関係で選んだ、初めて乗るAF便です。去年AFには二度と乗らないぞと決めたのですが仕方なくです。この消極的な選択から、すでに旅には暗雲が立ちこめていたのでしょう。俗に言う「ブラのホックの掛け違え」というものが生まれていたのだと思います。

オーロラが見えたら教えて欲しいとアテンダントに伝えておいたら、「今なら見えるかもしれない」と操縦席の後ろの辺りに連れて行ってくれました。肉眼では何も見えませんでしたが、現像してみると微かにグリーンフラッシュが写っていました。

CDGに着いたのは朝の5時半、当然空いている時間だったので6時過ぎには外に出られましたが、ネットで日の出の時間を調べ、一時間くらいしてから街に向かおうと決めました。写真にはふたつの要素があります。

「撮れたものと、撮ろうとしたもの」です。

この場合、私に与えられた目的は早くホテルに到着することではありません。クルマの中から街に向かう途中、どれだけタイミングよく朝の時間の移り変わりを観ることができるか、です。私の目的は写真の採集にしかありませんから行動の決定のすべてはそれが中心になります。「街に移動したときはまだ暗かったから撮れなかったね」ではないのです。どちらにしてもそんな時間に街についてもホテルに入れるわけではありませんから同じことで、一本早い日比谷線に乗るような日常感覚は創造性から一番遠いのだ、と理解してください。

どの都市でも同じですが、空港は殺風景な場所にあります。「これがParisの写真です」と一枚見せられたら「期待していたのと違う」と言われるでしょうが、私が一番好きなのは街のグラデーションが始まっていく場所です。

Parisの古くからある伝統的な街並みを撮ることは誰もがすることですが、この写真などは初めて東京に来た人がスカイツリーではなく、南柏の住宅街を撮っているようなものです。先日「写真は俳句に似ている」と言われてハッとしたのは、南柏や東十条の存在のような意味が理解できないと、表現が短絡に向かうということでした。ルパン三世のキャラクターで「一番好きなのはルパンです」という自己主張にいかに意味がないかということに近いかもしれません。

街の中心に向かうにつれて、人々の動きがわかりやすい日常に変化していきます。ここはクリニャンクールあたりだと思いますが、通勤する人が増えてきていい感じです。このために空港を出る時間を設定しました。

子どもを幼稚園などに送って行く親も多くなっていきます。

かなり中心に近くなってきました。

日本ではあまり見かけないクルマが走っていることも多いので「Tail lamp」シリーズのためにテールライトの写真も撮っておきます。

いつものホテルに着き、チェックイン前にスーツケースだけ預けてカフェで朝食。ホテルのあるサントノレ、パレ・ロワイヤルという場所は東京で言えば、オペラ座があるという意味で日比谷、ブランド街という意味で銀座、青山あたりでしょうか。この程度の庶民的な朝食でだいたい3000円くらいです。円安というより、日本の賃金と物価が30年前と何も変わっていないことの方が驚きなので「外国では、」と比較して言う気にもなりません。

喩えは完全に間違っていますが、小学校の同級生と30年ぶりに会ったら、皆はいいクルマに乗って家族と一緒に来たのに、ひとりだけまだ半ズボンをはいてコロコロコミックを読みながら歩いているやつがいた、みたいに『世界という同窓会』からは見られているのだと思います。

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。