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職人気質の傭兵:PDLB

『BLACKBERRY』を観ました。時代より進みすぎていたスマートフォン、ブラックベリーが辿った栄枯盛衰を描いた映画です。スタートアップの草創期にありがちなヒッピー、ギーク的な企業風土、そこに入り込んでくる辣腕ビジネスマン、加速度的に業績が上がってくると始まるスポーツチームの買収など、典型的な成功と失敗がわかりやすくそこにありました。

こういったドラマティックな企業のドキュメンタリーに近いフィクションを観ているといつも感じるのは、進めるチカラと押しとどめるチカラとのバランスです。強引な拡大戦略を仕掛けていく横暴なCEOがいるがゆえの成長と、企業がもともと持っていた理想が想像していなかった方向へ迷走していく様は、あとから結論を語ることはできるのですが、渦中にいる人物の選択ひとつで大きく変化していきます。

私がときどき自分自身に対して問いたくなるのは、フリーランサーの立場を通してきたことへの疑問です。会社にしなかったのはひとえに「組織」というものへの苦手意識でした。写真家は自分ひとりでもカメラを持ってさえいればどこに行っても可能な仕事です。そこで得られるのは撮影をした『手間賃』だけですから、レバレッジは発生しません。アルバイトが3時間働いて3時間分の時給をもらうことと大差はなく、単価は段階的に上がっていきますが、一日は24時間、一年は365日と決まっていますから、おのずと上限があります。

二冊の書籍を出したときに印刷した部数の印税をいただきましたが、これなどは私が書いた原稿を渡したあとはいくら増刷されても手間はかかりません。100万部売れることはないでしょうが、もしそれだけ増刷されれば何もせずにお金が入ってくることになります。これが「手間賃」との違いです。

ただ、職人気質で育ったのでひとつひとつの仕事を企業からオーダーメイドで引き受け、お互いに納得のいく写真が撮れたことで「ご苦労さん」と手間賃をもらうことが精神的に好きです。仕事で撮る写真は自分がその企業のアウトプットの責任を担うことになるので傭兵部隊とも言えますが、傭兵と違う点は「あまりにも思想信条の違う軍隊には参加しない」という部分です。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。