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趣味と仕事:写真の部屋・Anizine

漁師ではないのに釣りをする人は「魚を釣ること」を楽しんでいるのでしょう。それが趣味というものです。

私にはいわゆる趣味と呼べるものがなく、絵を描いたり文章を書いたり、写真を撮ったりという、こどもの頃から好きだったことのすべてを『仕事』に変えてきました。そこには趣味であることへの物足りなさがあったのだと思います。あるとき、友人が仲間のオリジナルTシャツを作っていました。「ああ、そういうのも面白そうだな」と感じたのですが、趣味でする気にはなりませんでした。ブランドを作り、ロゴやフリーペーパーを作り、BEAMSメンズとZOZOに卸して、それを10年ほど続けました。

これは本当に自分の個人的な感覚ですから、そうではないと感じる人がいるのも十分わかっていますが、わかりやすく言ってしまうと「商品として認識されないもの」を作る気持ちになれないんですね。絵が得意だという友だちが作ったTシャツはどんな仕上がりでもいいのです。お世辞にもうまいとは言えないイラストを変なフォントが取り囲んでいても誰も文句は言いません。しかし、彼らはそのサークル以外の場所にそれを着ていくことはありません。勝負を賭けたデートの時にはBALENCIAGAで買った一張羅を着ていくのです。

そこなんです。ここからきわめて厳しい話になります。

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Anizine

¥500 / 月

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

写真の部屋

¥500 / 月

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。