マンションとパン:博士の普通の愛情・後編
何度かお互いの部屋に行き来するうちに、僕らは付き合うことになっていた。なっていたというのも変だけど、ふたりとも何かをはっきり口に出して言う性格ではなかったので、自然とそうなったとしか言い様がない。2階の僕の部屋にふたりの荷物のほとんどを置いて、9階をできるだけ物がない部屋のようにして広々と使った。その夜は9階の部屋でテレビを見ていた。
「さっき、真吾はテレビを観ていて変なところで笑っていたね」
「そうかな。気になったの」
「うん、前だったら笑っていなかっただろうと思うところ