アニメ業界に革命が起こる日【ルックバックを鑑賞して】
2024年6月28日より『ルックバック』の劇場版が公開されまして、筆者の私も週末明けの月曜日に鑑賞しました。
『ルックバック』は原作漫画が超素晴らしいのですが、今回のアニメーション映画に関しては、映画ならではの演出が盛りだくさんで、特に"無音"については、映画館の音響ならではの演出だと思います。ストーリーも素晴らしく、クリエイターに刺さる内容だったのは間違いありません。おそらく『ルックバック』は、多くのアニメーターに影響を与える作品になるでしょう。
そして『ルックバック』以外にも"映像表現"や"クリエイティブ"という意味で、アニメ業界に革命を起こした作品は数知れません。というか近年は、新しい表現を試みる作品が増えており、特に、セルルック3DCGアニメーションの台頭によるカウンターで、漫画的な表現が増えているように感じられます。
しかし私が思うに、アニメ業界に真の革命が起こる日は、まだまだ遠いと考えます。なぜなら、アニメ業界の最大の問題である"持続可能性"が、解決されないままだからです。本当の意味でアニメ業界に求められるべきなのは、アニメーション表現の革命ではなく、アニメビジネスの革命だと思います。
近年、映像表現で注目を集める作品の多くは、アニメーターやクリエイターのブラック労働によって成り立っています。どれだけ映像表現が良くなっても、この部分が解決されない限り、真の革命とは言えないのではないかと思います。
この点で、もっとも近いポジションにいるのが「京都アニメーション」なのは間違いありません。京アニの待遇条件は、新人アニメーターにとっては破格で、そのための資金を確保するために、京アニはリスキーな「自社IPの拡充」に挑戦します。もしかしたら、その転換点となった作品はKAエスマ文庫初作品である『中二病でも恋がしたい!』なのかもしれませんが、それ以前に『涼宮ハルヒの憂鬱』などの作品で京アニブランドを確立したのが大きいでしょう。
一般的に、ビジネスで利益を増やすには2つの方法があります。売り上げを増やすか、費用を減らすかです。このうち、アニメ関連ビジネスの多くは売り上げを増やすことに躍起になっていますが、費用をどれだけ減らせるかについては、あまり注目が集まっていません。
私が思うに、アニメビジネスにおける革命は、ほぼ間違いなく"破壊的なもの"になるはずです。この革命により、アニメーションはもっと小さい組織で作れるようになり、その周辺のビジネスも可能な限り少人数でこなしていく。そして領域を「アニメ業界」にとどめず、これまで柔軟にキャッシュポイントを設けていく。ここにアニメ業界の革命のヒントがあるように思うのです。
はたして本当の意味で、アニメ業界に革命が起こる日は、いつやって来るのでしょうか。
アニメーション作品の品質が指数関数的に向上している様子を見ながら思う今日この頃です。
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