格の融合原理とラテン語の奪格の歴史について
(具格要素の話も参照)。
奪格という概念
ラテン語の奪格は概略として印欧祖語の奪格・地格・具格が合流した格であり、かなり広い機能を持っている。
そのため文法書でも「(1)本来の奪格(起点・分離など: ~から)、(2)地格的奪格(空間的位置・時間的位置など: ~において)、(3)具格的奪格(道具・手段など: ~によって)」といった分類を示して解説されていることが少なくない。
(一部の名詞では奪格とは別に独立の地格も残存。また印欧祖語の主格・呼格・対格・属格・与格・奪格・地格・具格の8格体系は後期の標準的な形で初期段階から様々な分化・合流を経て成立したものという説も有力になりつつある)。
しかしこれらの格はなぜ、そしてどのように合流したのだろうか。
そして奪格と地格と具格の合流した格が「奪格」と呼ばれることに理由はあるのだろうか。
今回はラテン語の奪格をテーマにそうした話をしていきたい。
そこには言語の普遍性や文法を生み出す認識の体系にかかわる要素が存在していたと思われるのである。
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