読売テレビ「そこまで言って委員会NP」にレギュラー出演している山口真由さん。その番組中の彼女のお作法で好感がもてるのは「自分の本を宣伝しないこと」。
なんとなくですが偉いなあと思います。
パネラーの中で一人だけ宣伝しないもんだから、山口さん、本書いてないんかと思いきや、たくさんいい本書いています(勉強本が多いけど)。
概要
今回の『「ふつうの家族」にさようなら』は、家族制度・家族にかんする法律の本です。「教科書7回読め」とかいう身も蓋もない勉強本ではありません。フェミニンエッセーの類いかなと思ったら、表紙から想像するよりはやや社会的、ほんの少し固めのご本でした。エッセーと評論のあいだって感じです。
なぜ、そんな感じなのかというと、山口さんの書きぶりが、家族制度や法律について書きながらも「イデオロギッシュじゃない」からです。「そこまで言って委員会」の他の出演者や他のフェミニズム論客がもつような「仮想敵」を、彼女はもっていません(または設定していません)。
自然体で書かれていて、とても読みやすかったです。
「近くの国が襲ってくるぞ」とか「郵便局をぶっ潰したら全部解決するぞ」とか劇場型仮想敵を設定すると、わかりやすいし、簡単なのですが、そう書かないのは彼女のこだわりであると解釈しておきます。
しかし、あげられるトピックに特に目新しいものはありませんでした。
以下、メモをもめ
「キリスト教的な発想に基づくかどうか」やや疑問。E.トッド先生に聞いてみよう!
だから、日本のように政府や業界団体が「倫理的に」決めたルールを国民が守るというのではなく、精子バンクなど市場に委ねられます。
ここも、エマニュエル・トッドの家族構成論と比較すると面白いかもしれません。
最後の最後になって、カント的な問いが出てきましたが、その「昔と変わらない普遍的な何か」を家族の「真ん中のところ」に持ってない人たちは、家族じゃなくなるんだよね、どんなに家族的な集団でも。
「血のつながりがなくてもこの子の親になる」という考えと「自分のいのちは絶えたとしてもこの家は守る」という考えの間に、「昔と変わらない普遍的な何か」がもしあるとしたら、これはもう一種の「覚悟」であるとしか言いようがありません。
「家族になる覚悟」、なんという重い十字架。
現代の若者に家族を作れといっても、これじゃ無理なわけです。