詩 「潮風」
くせ毛を濡らしたまま ベッドへ向かう 小さな音
血色の良い肌と対照的な 深い瞳
その背中を追いかけた
月だけが 彼を映した
潮の香りが 鼻をかすめる
抱きしめれば それは濃くなる
溺れる肺に 息を吹き込む
深くて暗い 心の海で
すっかり冷えたくせ毛を タオルで包み 灯りをつける
その目からこぼれない涙が 海をつくるんだね
本当に溺れてたら
水くらい吐かせてやれるのに
潮の香りが まとわりついて
底知れぬ渦へ 引き込まれてく
溺れる愛に イカリを結ぶ
深くて暗い 夜中の海で
海が染み込む 大地でありたい
海を乾かす 光でありたい
海に寄り添う 風でありたい
海を包む 空でありたい
いつか その心に
爽やかな潮風よ 吹き抜けて