太宰治の人間失格について
―― 恥の多い生涯を送って来ました。
(太宰治・人間失格より引用)
この世は化け物ばかりだと思って生きてきた。
それはそれは恐ろしい世の中だと思ってきたけれど、
自分も化け物の一人だと知ったときの絶望感は
深淵の闇に永遠に落ちていくようなものです。
―― 自分の幸福の観念と、世のすべての人たちの幸福の観念とが、まるで食いちがっているような不安、自分はその不安のために夜々、転輾し、呻吟し、発狂しかけた事さえあります。
―― つまり、わからないのです。隣人の苦しみの性質、程度が、まるで見当つかないのです。
―― 人間に対して、いつも恐怖に震いおののき、また、人間としての自分の言動に、みじんも自信を持てず、そうして自分ひとりの懊悩は胸の中の小箱に秘め
―― とにかく、彼等人間たちの目障りになってはいけない、自分は無だ、風だ、空だ、というような思いばかりが募り
(同・引用)
人間失格は一時期「読んだら自殺したくなる本」と言われていた。
読んだ当時はそれがピンとこなかったけれど、今ならよくわかるのです。