仕打ち
忌々しげに雨が降っている。
災害レベルの大雨だ。
クリニックへ外来受診。
場所は実家から電車で30分のこの地方最大のターミナル駅の近く。
地方都市といっても三大都市圏の次にデカい街。
コロナなんて関係なく人混みは半端ではない。
県内では私のような患者には定評のある専門病院その分院クリニックで主治医はそこのベテラン医院長。
今から色々と付き合って貰うしかない。
体調は最悪だ退院して環境がまた変わってしまったので疲れが酷い。
相変わらず、要所要所で薬を飲んで症状を抑えつける。
うつ、希死念慮、不安が交互にごちゃ混ぜになって襲ってくることがある。
そんな時はどうにもならない。
ギリシャ神話にパンドラの箱の物語がある。
神ゼウスは人間が男性しか存在せず、災難というものが無かった世界に、
パンドラという名の最初の女性をおくる。
すべての悪と災いを封入した箱を持たせて。
パンドラは地上に着くと、好奇心からその箱を開けてしまう。
すると、中に入っていたあらゆる災いが人間界に解き放たれた、それにあわてて蓋をした。
すると箱の底には「希望」だけが残った。
こんな話しだったと思う。
「希望」…絶望にどっぷりと浸かってしまっている私にはいま見出せないものだ。
多くの方から先を見て未来をと言って頂く。
しかしながら、正直言って先なんて見えない。
先ず考えられるところ、そこまで辿りつけるのか?
全てのものを失った人が辿りつく境地とはなんだろうか?
自分から望んで捨てた訳ではない。
生苦。
なんと厳しいものか。
退院前にはあった妻からの不定期ではあったが、
子どもたちの写メや動画の提供も一切なくなった。
SNSも完全に挨拶すらなく、既読無視や完全無視。
ここまでされるいわれなど本当にない。
人とはここまでも非情になれるものなのだろうか?
私はただ自分の妻子にひと目逢いたいだけなのにそんなにも難しいものなのだろうか…