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星空指数とジェリーフィッシュ

雨は種子を目指して堕ちる
土のなかにまで届くように
まっすぐでいることを
いつも心がけている

海月くらげは月を目指して浮かび上がる
空のはてにまで届くには
あまりに遠いことを
いつも心に留めている

雷で生き物たちを遠ざけて
土のなかにまっすぐ届くようにした翌日は
ふた葉がいつもより多く
背伸びをしている

それを私は知っている
だから雷が鳴りだすまでの
数秒のあいだ
ほんの少しだけ息をひそめている
はじめて口づけをした時のような
不器用さで

胸に抱いた恋心のくぼみは今は
土のなかで眠る種子のようで
それは夜の水槽で蠕動を繰り返す海月にも
飽きてソファに同化するように眠る猫のようで
自分のなかで疼いた翌日は
朝の透過した月に向かっていつもより多く
背伸びをしている

それを私はおぼえている
ふがいなく爛れた夜の帳を背に
少し先に仕事を終えた
錆びかけのバス停を追い抜いて
耳のうしろあたりで思い出そうとする時に
振り出した雨よりも先に
月を目指して浮かび上がる海月の発光を
私はおぼえている

レーダーのように動き回る猫の耳
私は土のなかで眠る種子のように探している
きっとあなたも誰かも同じように探している

遠くの遠くで何かを報せる合図のように
夜が光った
私は早歩きしながら息をひそめている


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りよう
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