あんクリ小説版/いろり庵のあすかさん-5.5
商店街を抜けると、一面の金色に包まれた。
目抜き通り沿いの銀杏並木は日差しに
負けないくらい鮮やかだ。
「負けたー。あー部長に謝んねーとな。」
気合を入れ直して会社に戻る。
◇◇
会社に戻ると、神林部長にはこっぴどく怒られた。
無理もない。部署の垣根を越えて、企画を出した上、先方に断られたなんて、誰が聞いても怒るに
決まっている。
せめてもの救いは、スイーツ部にいる同期の上野が
例のレシピをいたく喜んでくれたことくらいだ。
事の顛末とレシピが書かれたファイルを送ると、
上野からはすぐに返事が来た。
『レシピありがとな。
本当に微妙なバランスがやっぱり大事なのな。
あれだけ頑張って企画立てて、いとも簡単に
断られて…
おまえの失恋話で今度一杯やろうぜ』
ばーか、失恋なんかしてねーよ。
メールを閉じながら心の中で悪態をついた。
◇◇
あすかと一緒に仕事をしたのは、1年くらい。
そつなく仕事をこなす社員として、若手の中では
有望株だと話には聞いていた。
地味な感じがするが 、それでいて男性社員から
人気がある方だという噂と一緒に。
うちの部署に異動になって、営業企画という
仕事に悪戦苦闘しながらも、丁寧な仕事に
クライアントからの受けも良かった。
けど、若手のくせに、人の手を借りずに何でも
努力でカバーしちまうところが妙に気になった。
今は、もっと出来なくていいんだ、
今は、もっと頼っていいんだ、
頑張って壊れることもないくらいに、
自己管理だって出来てそうなんだろうけど、
わざと隙を作っておくことも必要なんだぞ
そんな風に言ってやる前に、あすかは会社を
辞めた。
身内が亡くなったっていうのに、きっちり引継ぎも挨拶周りもしてまったくかわいげがなかった。
ほんとかわいげがなさすぎだ。
◇◇
「さすがに今回の企画はちょっと強引すぎたか」
思わず声が漏れて苦笑いを浮かべた。
でも、まあ連敗は嫌だな。
もう少し様子を見るとするか。
自分自身に芽生えた気持ちにも、いろり庵にも。
たい焼きうまかったな。
あいつ、頑張ってるんだな。
もう少し仕事してから帰るか。
大きく背伸びをして見えた
いつものビル群が今日はいつもより光って見えた。
<了>
◇◇
ひだまりさんが書いてくれた第5回を梅澤先輩
からの視点で描いてみました。
正直ちょっと雑になってしまいました苦笑
また、登場するのかどうか…お楽しみに
いろり庵のあすかさん第5回
あんクリシリーズ