字幕について語らせて!
私アネゴはタイ英日の映像翻訳者のハシクレとしても活動しております。
映像翻訳とは映像を多言語化する翻訳のことを指します。具体的に言うと、映画やドラマ、ドキュメンタリーなどの映像作品を翻訳して字幕や吹き替えのセリフなどを作成します。最近だと企業のコンテンツやYouTubeなどの映像翻訳案件も多いです。
タイの映画やドラマを見る場合は、字幕版で見ることが多いと思います。
その時、タイの映画やドラマに限らずですが、見ていて「字幕に対して役者さんはもっといっぱい喋っている気がする…」と感じたことはありませんか?その感覚は…正解です!
セリフは全部訳すべきじゃない?と言いたくなるかもしれません。しかしそうはいかないんですね。もしセリフを全部直訳したとすると、画面の半分が字幕で埋まってしまいます。そうなるとせっかくの映像が見えなくなるし、そもそもそんな一瞬で大量の字幕は読み切れません。
そうならないために、字幕翻訳にはいくつかのルールがあります。それを本日は3つほど紹介したいと思います。
①1秒4文字ルール
まず代表的なのが1秒4文字ルールです。
原音1秒につき日本語4文字という字数制限が設けられています。
(これは日本語字幕の場合で、他の言語だと変わります)
もし3秒間のセリフであれば、字幕は12文字以内で作る必要があります。
なぜ1秒4文字かというと、視聴者が映像を楽しみながら読み取れる日本語の文字数は、1秒間につき4文字程度と考えられているからです。
②字幕は2行まで
次に字幕は2行までというルールです。
これは1回に画面表示される字幕、これを字幕一枚と呼びますが、字幕一枚につき2行までという行数制限です。
1行あたりの文字数は依頼によって変わりますが、だいたい12~16文字になります。これも字幕の読みやすさを考慮したルールですね。
また行のバランスを考慮する必要があります。
③句読点は使わない
もうひとつ、「へ~」ボタンを押したくなるルールがあります。
それは句読点は使わないというものです。
「意識したことはなかったけど、そういえばそうかも!」って思いませんか?ドラマや映画の字幕では句読点は見かけませんよね。
では、句読点をどのように表しているのかというと
・読点(、)は半角空け
・句点(。)は全角空け
で表します。
この3つのルールの他にも、翻訳者が字幕を作る時に行うことや考えることはたくさんあります。
字幕翻訳界の大御所、戸田奈津子先生の言葉を借りれば「透明な字幕」つまり読んだことを忘れるくらいの字幕がベスト。
私も字幕翻訳者のハシクレとして「透明な字幕」を作れるよう努めていきたいと思います。
もし次回皆さんが字幕ありの作品を見るときに、「字幕翻訳者はこんなこと考えてるんだなぁ」とこの3つのルールをちょっとでも思い出していただけると嬉しいです!