ハロー
知らない街を歩いてみたいどこか遠くへ行きたい
お部屋は北向き曇りのガラスうつろな目の色とかしたミルク、スイスのアルプスの山々の広大な草原をかける1人の少女、氷河の冷たい流れに乗ってエーデルワイスの花筏が流れてくる。キツツキが飛び回り鳴き交わし、木の表皮の裏でまだ冬眠しているタンパク源を摂りこんでいく。
一方そのころケーキ屋さんでは、エディブルフラワーの砂糖漬けを丹念に乾かしているところで、チリやホコリが舞おうものなら、猫を追い出し犬を追い出しと忙しくしていた。
地球をケーキのように6等分したほどの角度を同経度で移動したところをみてみると、ちょうど日本とは朝と昼が逆で、子供も大人も部分月食を見上げていた。山の麓では月が赤く見え、山と月のツーショットを撮ろうと、知る人ぞ知るフォトスポットに人々がつめかけた。
だぁれかさんが、みぃつけた。ヤギが跳ねる。子ヤギも枝に登って高く跳ぶ。それぞれ足の柄に個性が宿り、地面近くを、まだら、茶色、白、赤毛と色とりどりに踏み締める。
酒を飲みながらフラッと迷い込んできたおじさんが言う。「散歩が好きだから、趣味が高じて犬の散歩の代行を職業とするようになったんだ。ここには表の看板を見て来たが、一体何屋なんだ」「これはこれは、ようこそお待ちしておりました。ここでは人狼ゲームをしております。ですので誰が嘘をついているかは分かりません。そうして月日が流れるのをじっと待っているのです。人狼ゲームをしながらインディアンポーカーをすることも可能です。」
フィドロのピチカートがポロンポロンとスローテンポを刻んでいる。練習中の若者が指運の練習をしている。イタリアの口琴はマーランザヌといい、ボヨボンとフォドロに合わせている。全ての音は倍音を持っているのに、口琴を手にするまでそれに気が付かなかった。パーカッションの奏者は倍音までも操る。植物は倍音を聴いている。
電話が鳴って、まずい、まだ仕事の途中だ、慌てて出る。もうちょっと待って。お菓子を買っていくけれど、コンビニのやつでいい?
そうして我々は二日ぶりの再会を果たした。相変わらず瞬発力はなく、神経が行き届いていなかったけれど、自分に有利なように謀を巡らすことが、その場にいるための第一のルールだった。
スパークリングワインを振って栓を開けると、圧力に押されて飛び出てビショ濡れで白いシャツも真っ赤になる。全身ドロドロになっても、祭りの最中なので興奮が高まって何も気にならない。天高く聳える高い棒に登っててっぺんの花輪を誰が手に入れるのかを競っている。家に帰ったらシャワーを浴びてベタベタを洗い流す。
小さい秋、まだ、見つかりません。