提案力から生まれるWin-Win|床屋さんで接客について考えた③
床屋さんでの接客を目の当たりにして、接客のコアスキルとは?をテーマにした連載最後の3本目です。
前回までで、
観察力と想像力
質問力
について綴ってきました。
しっかりお客様の行動を観察し、お客様の心理を想像する。
そしてさらにお客様の潜在的なニーズを掘り下げるための質問をする。
そうすることで浮き出てきたお客様の心の叫び…
これに応えるには?
というのが今回のテーマです。
あなただからこそ提案できる解決策は?
最初の例に戻ります。
ある日、床屋さんはお客さんより
「白髪が多くなってきたと思う。白髪染めってどうなんだろう?」
と質問されます。
白髪染めのメリット、デメリットをお伝えするものの、
よくよくお話を聞いてみると、
お客様は白髪染めをしたいわけではなく、
清潔に見られたいという潜在的な願いがあることがわかりました。
ここで、床屋さんだとしたらどんな解決策を提案できるでしょうか?
自分の価値を認識するからこそ生まれる提案
ここで、床屋さんの価値について考えてみましょう。
床屋さんが他の人に持ってない経験や知識とは?
・それぞれの雰囲気・個性に合う髪型のイメージがわく
・毎日数多くの人の髪を切っている
・さまざまな髪型に精通している
・スタイリングのコツを知っている
・スタイリングの失敗例
・髪質・毛量の悩み相談ができる
といったことが考えられます。
そしてそれらを活かして、、、
・観察力・想像力・質問力を駆使して、お客様の悩みをしっかり掴む
・お客様の雰囲気にあった髪型を提案する
・ワックスやジェルなど、日々のスタイリングのアドバイスをする
・次回はいつくらいに来店すべきかを提案し、希望があれば予約をとっておく
といった、さまざまな提案を床屋さんだからこそできることでしょう。
①インサイト(まだ言語化されていない本音)の発見
②スキル・経験の自己認識
③提供価値に基づいた提案
私は接客のコアスキル、最後のピースは、この②と③を踏まえて提案力と定義したい。
旅館スタッフの提供価値は?
この提案力については、どんなお仕事にも転用できることでしょう。
温泉旅館スタッフを例にすると、、、
旅館スタッフの経験・知識とは、
・料理、設え、その土地の文化や伝統
・観光先情報
・旅館での心地よい過ごし方
・旅行者の悩み
といったものが蓄積されています。
こういった情報を駆使して、お客様の滞在を鮮やかに彩ることができるはずです。
例えば、お食事会場のドリンクメニューを見ながらこんなことを聞いてきた方がいるとします。
「このお酒って辛口ですか?」
この質問に対して、
「はい、このお酒はすっきりとした辛口でございます。」
とお答えする。
もちろんここで終わってはいけませんね。
前回の質問力の内容を参考にしていただくと、この先にどんな質問をすべきか、自ずと出てくることでしょう。
その先の会話を続けてみます。
「ちなみに、辛口のお酒がお好みでしたか?」
「いや、実は私が飲みたいお酒ではなくって、お世話になっているお酒好きな先輩にお土産を、と考えているんです。」
「そう言うことでしたか。先輩は辛口がお好みなんですか?」
「たしか、そういっているのを聞いた気がするんです。あとは、決まった銘柄よりも、いろんな土地のお酒を集めていると聞きました」
質問力によって、お客様の言葉になっていなかったニーズが明らかになりましたね。
・先輩へのお酒のお土産を買いたい
・先輩は辛口好み、各土地のお酒を集めている
このニーズに対して、その土地の文化や伝統を知る旅館スタッフならばどんな提案ができるか??
お客様の滞在を演出を常に念頭におきながら
具体的にこんな提案はいかがでしょうか?
「お世話になった方へのお土産は悩みますよね。お酒は特に種類も多いので。よろしければ、メニューにある【日本酒ペアリング】を試してみるのはいかがでしょうか?
当館の日本酒専門のスタッフが、会席コースの一品一品に合わせた地酒を6種類セレクトしています。それぞれお楽しみいただいた中でイメージに合うものを選んでいただけるかと思います。
『6種類試した中で、特にこのお酒はお刺身にあいますよ!』
なんてお伝えしながらお土産をお渡ししたら喜んでいただけるのでは?」
お客様も地元の日本酒とお料理を堪能できる。
また、自分で試して納得した上でお土産を選択できる。
職場に対しては、食事中のドリンクやお土産物の売り上げに貢献できる。
スタッフだからこそ持っている経験や知識をフル動員した提案力を磨くことで、今まで存在しなかった満足、経済価値を生んでいますね。
これはお客様にとっても、旅館にとってもまさにWin-Winの結果になりそうではないでしょうか?
ちなみに、専門職になればなるほど、このような経験や知識が当たり前になりすぎてしまいます。
そして、他者にとって価値であることに気づけなかったりします。
自分だからこそできる提供価値を常に自覚しておけるといいですよね。
以上、三回にわたって接客のコアスキルについて語ってきました。
あくまでこれは長年接客業に携わってきた私が実践してきた個人的な見解です。
今日も接客に携わるあなたの参考になれば幸いです。
おもてなし産業をかっこよく。
あんでぃでした。
参考記事|ほしのや軽井沢のおもてなし研修の達人