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顧客の本当の願いは言葉に出ない|床屋さんで接客について考えた①

「白髪多くないですか?染めた方がいいですかね?」
節目がちな初老の男性は恥ずかしそうに、理髪師に尋ねていた。
無造作に伸びた白髪混じりの頭髪。
しばらくハサミが入っていないことは明らかだった…

先日の床屋さんでの光景である。
二つ隣の席に腰掛けた初老男性の言動。
その後の理髪師の対応。
どちらにもとても興味が惹かれた。
まさに職業病である。


お客さんの本当の心の叫び

初老の男性は何を求めていたのだろうか?
私も散髪をしてもらいながら、ずーっと考えていた。

質問を言葉通りに読み解くと、
「白髪が多くなってきたと思う。白髪染めってどうなんだろう?」
という疑問であろう。

理髪師はその疑問に対して、
「それなりに白髪はありますけど、そこまで気にしなくてもいいのかな、って思いますよ。白髪染めって手もあります、ただ常にしなくちゃいけなくなるので…」
と、自分なりの考えを伝えていた。

それで満足する方ももちろんいるだろう。
しかし、初めの質問の後、初老の男性が小声で言った言葉を私は聞き逃さなかった。

「汚くみえないかな…」

ぽろっとでたこの言葉。
まさに初老の男性の本音ではなかろうか?
つまり、彼は白髪染めをしたいのではなくって、
(汚く見られたくない)
もしくは
(周りに嫌な思いをさせたくない)
と思っていたのであろう、と私は想像した。

それを踏まえた上でスタッフがより一歩踏み込んだ提案ができていたら、初老の男性はもっと満足できたのでは?
と感じた。


顧客の本当の願いは言葉に出ない

初老の男性はボソッと口に出していたが、実際の接客の現場ではそうそう言葉にでるものではない。

正直に伝えづらいというケースもある。
例えば、旅行中に急に女性の日がきて、用品が必要になった時、フロントにいるのが男性スタッフだったらお願いしづらいであろう。

また、以下のように、自分でも本当の思いに気づいていないケースもある。
某宅配食の会社が新商品を開発する際に、多くの主婦にインタビューしたところ、
「短時間で料理を済ませたい」
と多くの主婦が口にだす一方で、
「手抜き料理だと思われたくない」
という潜在的なニーズがあると仮説を立てた。
そこで、今までよりも調理の時間はかかるが、本格的に見える宅配料理を開発したところ、大ヒットしたという。

このように、本音、本当の願いというものは、他人でもあるスタッフに伝えることはおろか、自分で気付くのもなかなか難しいことなのだ。
だからこそ、接客の時には、お客様の一挙手一投足に五感をフル活用して観察することが大切だ。

お客様がどこを見ているか。
お客様が何を触っているか。
お客様がどんな言葉を発しているか。


観察から得た情報を咀嚼する。
そこからお客様の心の奥底にある本音を想像する…

接客業で大切なコアなスキルとはこの観察力と想像力ではないか、と私は思う。
それこそ、AIがとって変わることのできないスキルであろう。

接客における大切なスキル…
私はまだまだたくさんあると考えている。
次回は、接客業にて求められるもう一つのスキルについて綴ります。

おもてなし産業をかっこよく。
あんでぃでした。



星野リゾートの接客スキルの磨き方
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