映画「天間荘の三姉妹」
心がずっと震えっぱなしの映画でした。
大泣きをするというより、小さな振動で、胸のあちこちに溜まっていた涙が絶え間なく滲み出るような感じでした。
泣くつもりで観にきたわけではないのに、気づいたら、画面がゆらゆらすることしばしばでした。
天間荘は、あの世とこの世の間に存在する旅館です。
臨死状態にある人たちが、
もう一度現世に戻って生きるか
それとも、
天へと旅立つか
を決断できるようになるまでの間滞在する場所です。
その異空間を表現するためのカメラワークが面白く、初っ端から引き込まれました。
ほんの少ししか登場シーンがなく、アップにもあまりならないような登場人物に、大物俳優さんが多数出演していることにも驚かされました。
そして、エンディングテーマ。
絢香さんと玉置浩二さんのデュエットが、映画ですっかり潤った胸に響き、場内が明るくなっても、座席に深く沈み込んでしばらく立ち上がれませんでした。
映画とコンサートの両方を一度に味わったような感じがしました。
いのち。
生きていくこと。
死ぬこと。
家族や近しい人たちとのつながり。
誰でも自分を重ねざるを得ないテーマの映画です。
二時間四十分は、登場人物それぞれの心情に深く浸るのに
十分な長さでした。
その中でも、イルカの存在が意外に大きな意味を持っていると感じました。
人は誰でもいろんな悩みや苦しみを引きずりながら生きています。
その重さに耐えかねて、自ら生きることをやめる人もいれば、圧倒的で暴力的なできごとによって突然命を奪われる人もいます。
その人たちそれぞれが、自分の心と折り合いをつけられずに
天間荘がある三ツ瀬という街で時間を費やしています。
生者か死者かにかかわらず、人にはそれぞれ役割がある。
その人にしかできないことがあって、それは死者になったからといって消えるものではない。
なぜなら、
死者は生者の心の中に生き続け、
生者は心の中にいる死者に支えられながら生きていくから。
「半分死んでいるということは、半分生きているってことだよ」
という言葉が耳に残っています。
生きられるなら、人は体が続く限り、生き尽くすべきだ。
私はそんなメッセージを受け取りました。
そのことがストンと胸に落ちた時、人は覚悟ができ、自分自身を活かしきる準備が整うのだと思います。
それが、感受性がとても鋭いと言われているイルカに伝わり、イルカと一体化したようなエンディングシーンが、とても印象的でした。
少しだけ、すでに亡くなってしまった人たちを今までより近しく感じられるようになった気がします。
そして、
少しだけ、死ぬことが怖くなくなったような気もしています。
なんだかいい時間だったなぁと心の中で呟きながら、夕暮れのなか家路につきました。