アンリジャイエの言葉・本質Ⅱ
Tokyo Gentlemen’s Wine Club partⅡ
2018年に開催されたワインのプロフェッショナルが集まる濃厚無比なワイン会。地下の回廊に眠らせておくにはあまりに素晴らしい経験だったのでここに書き記す。
(余りにも長くなり過ぎたので、2編に分ける事にした)
▶カーゼバッセ ブルネッロ ディ モンタルチーノ リゼルヴァ ソルデラ2003年
香りは豊かでスミレ、凝縮した黒系果実、高いトーンでハーブリキュール的な香りと酢酸が少し。アタックはスミレリキュール、黒系果実風味で、練れて柔らかいテクスチャー。中間は緻密で堅牢なタンニンで繋がり、後口はタンニンの存在感はあるものの、ミネラルの引き締まりが長く心地よく伸びる。凄いワインは柔らかくて、力強くて、繊細。凄すぎる。泣く子も黙るレベルのワインが普通に出る(焦)
▶アルマンルソー クロ ド ラ ロッシュ2007年
クロ・ド・ラ・ロッシュはミネラルのワイン。香りは赤系果実で華やか、赤い花、樽の香ばしいニュアンス。トーンが高くクラクラするほど華やか。アタックはピュアで滑らかな質感、ミネラルを前半から感じるタイトな味筋。中間は巨大な塊のまま繋がり、そのまま余韻まで進む。巨大なクリスタルの長い余韻。余韻の盛り上がりが凄い。砕いた岩のフィニッシュ。泣く子ももっと泣くアルマンルソー。。
▶エミディオ ペペ モンテプルチアーノ ダブルッツォ 1984年
白も赤も圧倒的個性のある素晴らしいワインを手掛ける造り手。香りは黒蜜、ドライベリー、お香、チェリーリキュール的、動物、バルサミコ感、など複雑極まりない素晴らしい香り。アタックは凝縮感あるリキュール的果実味にテクスチャーは練れて滑らか、地に落ちていくように深い。中間は、滑らかに凝縮感のあるまま繋がり、後口は存在感を残したまま、まだ生きてるタンニンを含む恐ろしく長い余韻。各要素が大きく、調和した世界。この味を知ったらワインの世界に取り込まれる人は多そうだ。
▶ジョルジュ ルーミエ モレ サン ドニ 1er クロ ド ラ ブシエール2014年
今や幻の造り手、本当に買えない。。ルーミエが単独所有する畑であり、ルーミエを代表するワイン。香りは黒系果実、複雑で動物的ニュアンスを含む男性的な香り。アタックは滑らかで筋肉質、緻密で詰まった果実味、中間はタイトなミネラル感があり酸も硬い、後口はカチリとしたミネラル感の余韻。現時点では少しだけ笑ってくれる感じだが、飲み頃はまだまだ先。しかし味わいの奥の隙間に潜むのは巨大な何か。
ワインの神様 アンリ ジャイエ
▶アンリ ジャイエ ニュイ ミュルジュ1986年
一番最後の〆、としてまさか神様アンリジャイエ。。これが出たら終電逃しても良い。むしろ次の日仕事を休んでも許されるだろう。
俺が上司なら「それはしょうがないな…」と言う。
香りは強烈に華やか、赤系のドライベリー、オリエンタルスパイス、白檀、獣のタッチ、複雑かつ華やか、恐ろしい香りだ。
アタックは凝縮感あり強いが練れてシルキー、つるりと感じるほど、滑るような舌ざわり。中間も一筆書きのような滑らかさでワインの本質が舌を滑っていく。しなやかに強く、滑らかに過ぎていく。余韻は巨大で、長いミネラル、永遠に続いて欲しい。
ワインを飲んだというよりも、ワインの本質を飲み込んだ。
アンリジャイエは「ブルゴーニュの父」とも呼ばれる偉大な造り手だが、今や偽物が多く出回り、本物に辿り着いても天文学的な金額になっているため、もう個人で探そうとしてもほぼ不可能。
だからこの一生に一度あるかないかぐらいの貴重な経験を噛みしめて、地下の回廊の薄闇でたまに反芻するのだ。
アンリジャイエの言葉の意図、そこに潜む意思
昔から良いとされて来た事を理解して実行し、新しい技術も取り入れながら品質を高める、その結果、自分しか造れないワインに辿り着ける。
温故知新
これはワインだけでなくどの液体にも当てはまる
故人の遺志を引き継いで時代を前に進められるのは若き世代だけ。
俺も進もう。