【書評】他人の人生相談で涙を流す~鴻上尚史のほがらか人生相談
全部読み終わってないけど、今、滝のような涙を流してこれを書いてるのね。今更ながら、染みる。どうしてこの人は、こんなにやさしいんだろう。そして想像力が妄想で終わらず、的確な洞察と相談者に寄り添う回答へと繋がるんだろう。
いいなあ。うらやましい。
仕事上、どうしても若い人にアドバイスすることもある身としては、本当に見習いたい。
そして、それ以上に、これは、多分彼の生い立ちとか経歴に関わってくるのかもしれないけど、毒親持ちにかなり効くアドバイスが豊富すぎるんだよね。
もう、どのアドバイスも心に響くんだけど、毒親持ちの方へのアドバイスの最後が、「あなたはあなたの人生を生きてください」って書いてあって、もう涙が止まらなくなったよね。実は自分もそのまま、「私は、私の人生を生きるんだ」って、誰も読まないブログに書いて離婚を決意したんだよね。
書評と言いつつ自分語りになっちゃうけどさ。煮魚は、文章書くのが大好きでね。ネットが始まった頃からよく書いてたの。そりゃ、ナルシスト気味な、今思うと黒歴史っぽい内容も書いていたけど、人にどう思われるかよりも、感じたことをタイピングして文字化する、考えてる事や感情を可視化する作業がとても好きで、よく書いてたのね。
すると、結婚後にそれを続けてたら、他人くんからチェックが入るようになったんだよね。例えば育児がしんどくて家事ちょー手抜き!みたいなことを書いたら、自分がだらしないことを自慢げに書いて正当化するなって、叱られた。辛い事苦しい事をブログにぶちまけても仕方無いから、楽しいこといいことを書こうとするじゃん?そしたら「都合のいいことだけ書いて、自分のいいとこしか見せないんだな」とか言われちゃってさ。そういうのが辛くなって、ブログを閉鎖してはまた書いて見つかって閉鎖して、ってね。しまいにコソコソ、家族が寝静まった夜に息をひそめて書くようになったり、公開設定しないブログに日々書いてたり。
だからさ、こうして、見てくれる人がいるかどうかは分からなくても誰かの目に留まるかもしれない場所で書けることが、本当にうれしくて幸せで、金銭的にも厳しかったり子魚の反抗期に心折れそうでも、ああこの時間で生かされてる!って思えるくらい、うれしいんだよね。
で、話を元に戻すと。自分に対してではない、他の誰かへの相談で、ここまで共感力を発揮する人生相談って、中々無いと思ったんだよね。某新聞の人生相談は、相談内容の選び方と回答者の人選の奇抜さで面白いから嫌いではないけど、ある意味、他人の悩みを娯楽化しているきらいもあるよね。でも鴻上さんのはどの相談も普遍性を含んで、誰かの心のどこかの部分にひっかかる感じ。新聞の相談みたいな、奇抜すぎる、ちょw的なのはあんまりない。ほのぼのしたのもあるんだけどさ、そこからものすごい目から鱗な流れに持っていくとか。欅坂ファンのおじさんへの回答とか、本当に感心した。流石、鴻上。高校生の頃演劇少女だった煮魚は、彼の「朝日のような夕日を連れて」って台本をやったことがあってね。とっても好きで、憧れてた。それが時を経て、50を目前にした今、再び彼の著作でこんな充実した気持ちを味わうことができるなんて。今風に言うとマジ神、じゃんね。
内容はもちろん、表現も堅苦しくなく、説教臭さもなく、文筆家だけあって面白い。鴻上が彼自身のことを「自分は昔、イケメン村の住民だと思っていました」って表現する下りとか、めっちゃ好き。昨今、誰かの外見をジャッジするようなコメントって、場面としては必要でも語るのが憚られるじゃん?それを、こんな語り口でさらりと不快感無く書けるって、やっぱすごい。
思わずシリーズ3冊まとめてポチっちゃったよね。
こんな相談、もっと早く読みたかった。「お金を貯めて、家を出てください」って、すごくシンプルだけど、そう書いてある。煮魚には、そう言ってくれる人は、誰もいなかった。いや、一人だけ言ってくれたのが、元夫だった。
「そんな親、捨てちゃえよ」
そんな事言ってくれる人、誰もいなかった。だから、縋った。
でも、捨てて逃げた先が刑務所だったっていうね。
自分が自分らしく、自尊心を持って生きることができるようになるヒントが、いっぱい書いてあります。毒親の人、DVとか辛い結婚に囚われている人、いじめとか各種ハラスメントで人間関係を抑圧されてる人。
どうか、これを読んでください。立ち向かう勇気、もしくは逃げる勇気のどちらかをもらえるでしょう。どっちでもいいんです。どっちの方向に進んでも、その先は自分のための自分だけの人生なんだから。