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60.混ぜる交わる暮らしに新しい風が通る
「趣味はなんですか?」
時々、誰とはなしに訊かれることがあります。そのたび、なんだろうと胸に手をあてて考えてみます。
本を読む、朝食を楽しんでみる、仕事を全部終わらせて、シネマを見ること。数カ月ごとの旅、気の置けない人と会って過ごすこと、朝と夜の散歩……。面白いことはたくさんあります。
ただ、いま思い描いていることは少し違うような気がします。
本人が気づかないうちにそれをしてしまい、なおかつ、それをしている間は機嫌がよく心が浮き立つものは……、あ! とひとつ思いつきました。
いや、これは趣味といえるかどうか分からないのですが……。
1.自分好みの味にブレンド
わたしは、煮詰まった時によく、○×○、ブレンドするということをします。企画書のアイデア、小説を書くときもそう。足したり、引いたりをしてみます。素材と素材を混ぜる。そうやって生まれた化合物は、ちょっと不思議な顔をしています。目先を変えてみると、なにげない日常も、いつもと違うベクトルで動き出すことがあります。
本題に入る前に、ふと瞑想のことを話してみたくなりました。瞑想とは、いまの瞬間に意識を向けて、その現実をあるがまま知覚し、その時に現れる想いや感情に囚われないでいる状態、呼吸をつかったセラピーのようなものかもしれないと思うことがあります。
仕事部屋の網戸をガラガラとあけて、ベランダへ出て座り、虫の鳴き声や葉ずれの音をBGMに瞑想してみるのもいいものです。
自然✖️瞑想。
背筋を伸ばして両肩を結ぶ線がまっすぐなるように座り、眼を閉じます。そして呼吸に伴ってお腹や胸がふくらんだり縮んだりする感覚に注意を向け、その感覚の変化を気づきが追いかけるように。
始めた頃は難しく思いましたが、息を吸って吐くまでの間の腹式呼吸に自分の注意力を向けて集中することだけ。匂いや音や空気のゆらぎに五感を飛び澄ませ、解放された意識の中で今のスペースにいること。瞑想で得られる空っぽな心。そこは揺るぎなく平和。一過性の感情(雑念)が浮かんでもそれらが消えるのを観察し、心の中に何が起こっているのかを注目する。思考や感情が通り過ぎるのを道端で座って眺めているイメージかもしれません。そうやってほどなく心が落ちついてきたら、ぽっかりと外界に包まれてポンと浮いているような錯覚を覚える時もあります。
自然の音を耳でとらえながら瞑想できる日など、実は一年でもそう多くはないのですが、たまに、良い瞑想ができると、様々なことが受け入れられ、性器の上あたりが落ち着いて、整った感じがします。
さて、ブレンドの話です。
わたしは、嗜好品と嗜好品を混ぜてみる、ということを時々やります。香水なども試すこともあります。
また日常的にお茶をよく飲むのですが、茶葉と茶葉をブレンドし、好みの味を発見した日にはかなりテンションが上がりました!
今朝は、ムジカ(大阪堂島発祥の紅茶専門店、現在は芦屋店と三宮店のみ)の「デラックス・ディンプラ」に、ティーポンド(東京江東区の清澄白河の駅前にある紅茶専門店)の「ウバ」をまぜてみます。途中で、ミルクを少し投入。
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すると、ディンプラのコクの味にエキゾチックな風味がプラスされ、キリッとして、おいしい!朝のティータイムがうまくいくと、一日がすっきり。プラスな気分で過ごせる気がします。
また、「ディンブラ」と「アールグレイ」をブレンドしても、風味が増しますし、中国茶の鉄観音や文山包種茶に、ジャスミン茶を混ぜても、夏らしい爽やかな味に生まれ変わります。その日の気分で好きな茶葉をブレンドするのは、なにも茶ばかりではありません。
時には、コーヒー豆も、ガリガリと擦る時に、気に入った豆と豆を、ブレンドして愉しみます。
朝、毎日頂くのが旬のフルーツ。7月はおいしい果実が目白押しです。完熟プルーン、すもも、マンゴー、キウイ……。なかでも、毎年取りよせるのが、パッションフルーツです。
今朝も、鹿児島県の徳之島からふるさと納税のパッションフルーツが2箱届きました。
わたしはこのフルーツが大好き。銅色の実の中身は、種を包む半透明の果肉を含むゼリーの、ほの酸っぱさが、たまらないのです。包丁で半分に割ってスプーンで中味をこそぎとり、普通ならそのまままパクリッ、とやるのですが、きょうは、こんなアイデアを思いつきました。
朝フルーツによくやるのが、ヨーグルトと果実をブレンドすること。ここに、グラノーラを混ぜることもしばしば、あります。
ある日にはヨーグルトを麻の布巾で包んで宙づりにして晒し、水気を切る。こっくりチーズのような生乳が出来上がったら、パッションフルーツを加えてみました。これ、案外といけました。ヨーグルトの甘酸っぱさとフルーツの甘酸っぱさが掛け合わされ、時間をかけた乳の発酵が、味わいを深めています。素敵なデザートが完成しました。
そう、酸っぱいものと酸っぱいものを掛け合わせると、パンチの効いた新鮮なおいしさが生まれると気がつきました。タネをガリッと噛むと、ビタミンが爆発したような味です。
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じゃあ、冷蔵庫にあったグレープフルーツと掛け合わせて、ミキサーにかけてみよう。レモンもギュッと絞り1滴、2滴。わーー、ぷるっと肩が震えるほど南国っぽく、苦味があって、上品でおいしい。面白い。
思っていた味になると、やったぜ!と……!
そういえば数年前、鹿児島のデパート「山形屋」の地階フルーツコーナーで、パッションフルーツの100%ジュースのことを思い出しました。割烹着を着ていたおばちゃんが、皺くちゃの手で「ハイ、新鮮だよ。ジュース一杯に三個使うんだから」と言って渡してくれました。え、3個も?(商売もあがったりじゃないの?)確かパインも混ぜていらしたと思います。
普通の紙のコップに入っていたのですが、一口ごくっとやると、夏の暑さが一気に遠ざかり、果実の花っぽい酸っぱさ、からだ中から爽やかな風が抜ける。名前のとおりパッション(情熱)を感じる、素敵な旅の思い出の一品になりました。
帰宅後、どうしてもこの味を再現したくて、レシピを教えてほしいと鹿児島の「山形屋」に電話してみたのですが、やっぱり予想どおり食品売り場のおばさんには、繋がりませんでした。
先月母が似たようなことをしていて、驚きました。「納豆の中へ、長芋を擦りながして入れて毎日食べているの。栄養価は高くなるし、なかなかいけるよ」と母。なるほど。舌触りも滑らかでいい感じ。蕎麦ダシなどを加えれば、案外とおいしいです。
そうそう、夏場、気に入っているミネラルウォーター(プラスイミネラルウォーター)に、強炭酸を加えて飲みます。途端に、微炭酸でからだにやさしくなります。いい気分転換になりますし、わたしは昨年このシリカ入りのミネラルウォーターで、3キロも体重が減りました。
冷えた蕎麦に、生のからすみを大量をかけるのも粋ですよね。
日本酒と、からすみ蕎麦って、最強の組み合わせ。なんだろうな。蕎麦に、ぼらの卵をまぶしただけなんですが、口あたりまろやかでいて、ほんのり磯風味のバターっぽさというか(塩味)、チーズのような発酵感が、さっぱりした啜る蕎麦にもってこい。
冷蔵庫でキリッと冷やした純米酒が、これまたよく合います。近所の鮨屋でこれをオーダーした時の驚きは、言葉にならないほど、いくらでもいけました。しばらくは、からすみ、からすみ、からすみ、と頭の中を黄色いたまごが駆けめぐり、パスタや、オムレツに混ぜてみたりしてアレンジしました。
この遊びは、自分が記憶している味覚と臭覚を信じて、素材をいったん裸にしてから、アレンジすることを、面白がってみるのです。頭の中で想像することが楽しい。レシピ本には書いていない自分流の発見は、ちょっぴり暮らしに彩りを与えてくれます。
2.おいしいものを包む紙とこれから読む本のコラボ
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紙の本が好きです。木から繊維を取りだし、のりを混ぜて漉く、そんな複雑な工程を幾通りも経て紙が生まれるという過程にも畏敬を覚えます。
ページをめくる時の指先の感触、印刷の文字、奥付、しおり……。眼にも手にも心地いい感触にやられます。独自の文体という風が入り、誰かが書いた物語が始まるのですから。WEBが発展しても、紙の本や、それを販売する小さな書店はなくなってほしくないです。
そうだ。好きなペーパーを使って、ブックカバーをつくってみたらどうかな、とある日、気がつきました。
ならば、おいしいものを包む紙というのは、舌の記憶とともに特別な思い入れがある。
旅で出会った綺麗な和菓子の包装紙や、通い慣れた店の親しみのある包装紙、ついついクローゼットに仕舞っていた美しいペーパーカバーと、愛読書をコラボレートさせては、どうだろうと。
裁縫は嫌いだし、工作も苦手なわたしではあったのです。糊や鋏を使って、子どものために、何かを作ってやった記憶もたぶんありません。まあ、それはさておき、娘にも手伝ってもらってオリジナルブックカバーを作ってみました。栞もお揃いで。
おいしかった思い出と、忘れたくない物語を掛け合わせるという遊びです。
鞄の中に入れていても、ソファテーブルの上に出しておいても、本棚に並べられても、一目であれ、あの本だ、とわかります。読んでいる間はずっと、触れていられます。
シュッとして、端正でいて、手ざわりがいいんです。この紙とどうやって出会ったのか、その時その時の、記憶も、ひとつの物語です。
そういう意味では、わたしのたった一冊の本。記憶と物語のコラボレートではないでしょうか。
自分で作ったブックカバーは、色映えもして、本の醸す空気感も、なんだかこの上なく馴染んいて、絶対に他の本と間違えません。年代別に並べれば、自分の歴史みたいなものにもつながります。
3.応用編。こんなこと、あんなことも実験的に
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暮れなずむ夕方、ベランダにデッキチェアを出して、iPadでミニシアター映画を見ながら、炭酸に日本酒を混ぜて、ぐびぐび飲みながらの鑑賞会はどうですか。
緑の風でもサーッと背に当たれば、じぶん家とは思えなくて、気持ちだけは、バカンス気分。脳を騙しているのですね。
映画と、屋外と、オリジナルカクテル!これだって、好きなものと好きなものを混ぜ合わせて、豊かな時間という新しい化合物を作っている。そう思って愉しんでいる時もあります。
また、最近こそあまりやりませんが、バスタブにお湯を張って手脚をのばし、のんびりアイスやフルーツをいただきながら、本のページをめくる。
これは江國香織さんの本の中では、日常茶飯事に登場するシーン(『冷静と情熱のあいだ』など)。
そういう時、風呂の小窓は必ずあけておきます。家人などは知りません、この不良っぽさが、ムフフと、リラックスできる。物語の世界が、近づいてくるのがわかります。
はい。普段はたいてい、わたしは根暗です。ああ、これもダメだった。なぜ自分はこれほどスローモーで、考えも浅はかなのだろうとか、人に誤解を与えるようなことを口にしてしまうのだろとか。落ち込む日も少なくありません。
けれど、常識に囚われないで。新しいことを面白がる、そんな時間を持つことで、脳をのびのびと遊ばせてみるのです。そうすれば、人生捨てたもんじゃないよって、いう気持ちにもなるもの。
人と人とのミクスチャー。究極はこんなことも、やってみたことがあります。ホームパーティーなどは、あまり経験はないのですが。たいていは顔見知りばかり集めてワイワイ、がパターンでした。
もう5年ほど前のことです。滋賀県の近江八幡で、高校時代の友人Aと、仕事で知りあったデザイナーの男の子友人Bを誘い、水郷めぐりをしたことがあります。水郷の里「まるやま」という地名度のない、小さなカヌーのような手こぎの舟でした。
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葦が生える川面を滑るように漕ぎ進む、おぼつかないゆっくりとした運転。そして偶然と偶然が重なり合った、出会いにしては、アッと言う間の意気投合。それは春の陽が雲間からそそぎぽかぽかと照る気持ちいい一日でした。大事な友人と友人とを混ぜて、生まれてはじめてのグループメンバーと、船遊びを企てた日。
話が次から次へと弾み、仲のいい友人同士が、馴染んでいった日には、よかったなあと。こんな日は二度と来ないかも。そう思えた瞬間でした。
なんか面白いことないかなぁと、口にしてしまいそうになる時。仕事の忙しさに翻弄されている時。隙間時間にふと思いつく、そういう時の「妙案」を、忘れないでいたいなと思います。
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![みつながかずみ|writer](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/40993707/profile_cd4b1e410bda56f98d5d3b49b3350396.jpg?width=600&crop=1:1,smart)