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藤井風サウンドに迫る① ’20 12/17放送 J-wave SONAR MUSICより「優しさ」を語るYaffle氏と坂東氏
藤井風「HELP EVER HURT NEVER」を担当するきっかけは?
<Yaffle>
(藤井風との出会いは)はじめはレコード会社の人から。高岩 遼さんSANABAGUN.(サナバガン)聴いてたらしくて。
(藤井風本人が)自宅でボイスメモ取ってて。それを会話のキャッチボールしながら形にしていく。一番時間を掛けたのは「本人らしさが出るように」 (Yaffleさん自身の)自我を入れないようにした。
(アレンジ作業は)楽器を触りながら?
ラヴェルのファンレターの話、わかる。(ファンが)曲を聴いて号泣しましたって言うけど、ラヴェル自身は泣きながら、ましてや海を見ながら曲なんて浮かばない。(Yaffle自身は)それに近い。ショウガのチューブみたいに絞り出す。
「プロデューサーとしてどんな提案をしたのか」
<Yaffle>「優しさ」は1番、2番があって、ブリッジ(つなぎのフレーズ、主に間奏のこと)、2番を消した。(藤井風に)絶対、何か言われると思ったが意外に「たしかに」って(OKだった。)
<坂東>だんだん積んでいく途中の転調がすごい、こう行くんだというところが色々あって。(コード押さえて)え?うそ!どうしよう(放送事故じゃない?)こう行くんだ!「ファ♭ソ♭ラ♮ラ♭シー(コード弾く)」これがなんかオシャレじゃないですか。
さすが四声体どころか複雑なテンションコードの聴音もバッチリ、バス課題も対位法もクリアしてきた坂東さんの底力をみた。「優しさ」はもちろん予習はしていただろうけれど、鍵盤を探らずともバッチリ採れすぎる(当たり前か)。もちろんYaffleさんもこれはできるはず。
<Yaffle>あの子(藤井風のこと)やっぱりオルタードとか大好き。全部#11とか♭9とか
(オルタードとは、♯や♭のついたテンションコードのこと)オルタードテンションは、♭9、♯9、♯11、♭5、♯5、♭13の6つがある。
<坂東> 「♭ラー♭ソー(コード弾く)」
そうそう、それ大好き。一発でソロになるとこ大好き。ここはヤッフル先生のアレンジ?
<Yaffle>コード進行、基本は彼のプライマリーな部分の感じがしてて。そこは間引くと全然ちがうものになっちゃうんだろうなと。だからあんまり触らないようにしている。
藤井風さんのプライマリー(基本的特徴)「藤井風らしさ」は浮遊感のあるコード進行。それを知り尽くしているYaffleさんならではの発言。放送の冒頭で話した「本人らしさが出るように」 はこういうことだ。
<Yaffle>一回もらったピアノ(のデモ)を、これはどうだろう?ってところあったら直して。レコーディングに持って行って弾き直してもらう。
上の弦で「ファ♭ソ♭ラ♮ラ♭シーラソファ(コード弾く)」はあったかどうかわからん。弦は上行かないようにした。いわゆる「うわぁーすごいバラード!」みたいな感じにしなかった。抑制的な感じにして。
泣かせのストリングスはヴォーカルを引き立てるために、あえてオーバーアクションにしなかったということだろう。かけ上がるようなストリングスはフレーズを盛り上げ、サウンドをあおるような効果が出る。引き算の美学があちこちにうかがえるアレンジ。
ローカンは(ローランドTR)808。普通(こういうバラードのサウンド)だったら生のベースでやるけど、ずっとベースは808でドゥードゥーンって。 EDMヒップホップ以降な感じ。
Roland TR-808 Rhythm Composer
808とは
1980年に発売されたローランド社の歴史的名器、リズムマシンTR808(通称ヤオヤ)の事だと思われる。EDM、クラブシーンをはじめ、ブラックミュージックでは808の音色を使うのが定番だった。
聞けば「あ、808!」とすぐにわかる少し歪んだようなチープな音色が特徴的。タイトなグルーヴ感を狙う時には808!みたいな感じだった。R&B、ヒップホップでは定番の音色だったが、EDM界隈でも、やたらみんな使っていたように思う。
808ステイト(イギリスのテクノバンド)など、グループ名に”808”を使うものも出たほど。わたしも欲しかったが、当時は入手困難だったためシンセサイザーのプリセット音をエディット、音色を似せて打ち込んでいた。
Yaffleさんも坂東さんも絶対コレ、聴いていると思う。チープなスネアドラムの音がいかにも「ヤオヤ」って感じ。
ちなみにピコ太郎の「PPAP」でも808のカウベルの音が使われている。
以下のサイトで音色が聞けます。
藤井風さんの音楽が素晴らしいからハマるのか、それとも音楽が好きだから藤井風さんにハマったのか…
いつも考えるのですが、タマゴが先かニワトリが先かの話です。ただ、風さんの楽曲は「浮遊する調性感」が個性であり、かなり強い特徴だと感じています。
ちなみに「優しさ」は♭の数が5つ、この曲はドビュッシーの「月の光」と同じ「変ニ長調」です。「優しさ」のイントロからいつの間にか「月の光」になってしまうアレンジで弾いてみると結構、面白かったです(笑)
これまで自分がハマってきた音楽は必ず調性が浮遊している
「浮遊する調性感」クラシックではラヴェルやドビュッシーなどの印象派がそれに当たります。そしてメシアン、(坂東さんの好きな)ブーレーズなど現代音楽へと繋がっていきます。Jazzに親しまれているYaffleさんも印象派はお好きなはず。
いずれにしてもYaffleプロデューサーの音楽との向き合い方がこれまで以上によくわかる内容でした。現代音楽ゴリゴリだったYaffleさんとブーレーズ(わたしも中学生の時から大好き)にハマったと語っていた坂東祐大さんの学生時代の作品、聴いてみたいです。
関ジャムにYaffleさんご出演 知られざるアレンジャーの世界を解説
藤井風さんのこと、いろいろ書いてます。
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