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躁うつ日記#11 誰にも許されないままライブに行く

軽躁状態の私は軽率にライブチケットを取る。「おっ!休みの日じゃん!」と思ったが最後、チケットは予約済みになる。

問題なのは、当日だ。大体苦しんでいる。
鬱状態で行けない、とかではない。もちろんそういう場合もあるが、多くは、不安に駆られているのである。

新しい場所が苦手だ。新しい場所に行くことを回避してきた人生と言っても過言ではないくらい、同じところにしか行かない。気軽にふらっとカフェに寄る、といったような手軽さから私は遠い。ライブは未経験のライブハウスであることもしばしばなので、コンディションが悪い時は、不安が先だち、めちゃくちゃハウスについての情報を検索しまくる。キャパは?1ドリンク何円?支払い方法は?行った人の体験レポは?
それを手に入れたことで安心するわけじゃないのに、知らないことが怖いので、検索が止まらなくなる。

且つ、ライブは大体スタンドなので、立ち続けることになる。これも、調子の悪い時はきつい。

学生の頃に、私は、よく朝礼を抜けるやつだった。なぜかというと、みんなで揃った体制で聴き続けないといけない時に、それを意識してしまって立ち方が分からなくなるからだ。

正確には、立ち方が合っているか?が気になり始めて「いや全然大丈夫大丈夫でももし力の入れ方が変になって倒れたらどうしよう」と、ドドーッと思考の波がパニックになり、結果、途中離脱するのだ。多分、列からわざわざ抜けなくちゃいけない(≒簡単にその場からは逃げられない)という環境が不安のトリガーになるんだと思う。

ライブでの途中退出は気を使う。前らへんにいたら、後ろの人をかき分けて出て行くことになるし、曲の途中で抜けるのはできるだけ避けたい。
「簡単に逃げられない」ので、トリガーが発動しやすいのだ。

調子がいいと思って参戦しても、途中から急にパニックになりかけることがある。そうすると、自分のコンディションに確信が持てなくなるので、行く前から「またパニックになったらどうしよう。迷惑をかけるから、行かないほうがいいんじゃないか」と思う。

1人、出発する時刻ぎりぎりまで、だらだらと汗をかきながらこんな思考と戦う。もうチケットを取らないほうがいいんじゃないかとも思ったりする。

歯を食いしばりながら現場に行ったこともあるし、思考に負けて布団に伏せったこともある。自分でも何をしているんだと思う。
私は楽しみたいだけなのに、私がそれを許してくれないのだ。



『ACT 不安・ストレスとうまくやる メンタルエクササイズ』(武藤崇著)という本を読んだ。
ACTについては少しかじっていたので、スルッと内容が頭に入ってきた。

ACTはざっくり言うと、頭に浮かんでくる思考と戦わず、ただ観察し距離を置く、という方法だ。(※正確な表現ではない)
いわく、思考はもっともらしいことを呟いてくるものである。
そして、たとえばネガティブな思考が浮かんだ時、そこから「そんなことない」とか「そうかも、だって……」と、さらに思考で応戦した結果、思考にがんじがらめになり、苦痛につながる、といったパターンがあるという。

だから、浮かび上がってくる思考は思考として「そう思うんだね〜」と聞き流す、など、思考をそのまま置いておく工夫をすることで、自分が大事にしたい価値(たとえば、「ライブを心から楽しみたい」とか)に向けた行動を取れるようになる、というのが、ACTの目指すところだ。
(※正確な記述ではないと思うので、興味を持たれ方はぜひ本を読んでください)

ライブの前日に、たまたまこの本に出会い、ACTのことを思い出した。
やってみよう。



迎えたライブ当日。囁いてくる、大量の思考たち。
「行ったら疲れて明日仕事に行けなくなるんじゃない?迷惑かけちゃうよ」
「途中で体調不良になるよ。前も緊張して頭痛が起きたじゃない」
「やっぱり私みたいなやつが、チケットを取るべきじゃなかった」
「家にいたほうがいいよ。遊んでないで、家事しなよ」
そんなことをえんえんと呟いてくる。

うんうん、で、私はどうしたいの?と聞く。

ライブに、行きたい。ライブを、楽しみたい。

じゃあ、行こう。

そこからは、うるさい思考をBGM代わりにしながらメイクをし、持ち物を準備した。時々思考に引っ張られながら、乗り換え駅を確認し、電車に飛び乗った。
私は、「私」に許されないまま、ライブ会場へ足を運んだ。

夢中になってライブを見た。行けてよかった。行って、よかった。

じゃあこれでもう大丈夫!とはならないことは、私がよく分かっている。でも、私は挑戦し続けるという選択が出来ることも分かった。

今度のライブはもっと思いっきり楽しみたい。次のライブまでには、もう少し思考と上手く付き合えているといいな。そんなことを思いながらセトリの曲を聴いた帰り道だった。

今回読んだ本↓

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