一瞬のジャンクション
起業家という道を経て、今は作家を夢見て執筆活動に明け暮れる橋本なずなです。
こっちに来て欲しい。
彼に対する思いが恋心である他に、私は彼に勝手な期待をしているみたいだ。
こっちに、こっち側に来て欲しいと。
彼の言葉の主語はいつもネガティブだ。
後向きな人だとは思わない。
けれど以前に会った時に “生きているうえで何を大切にしているか” と尋ねてみた。
すると彼は「人に嫌がることをしない」とか「嫌なことは嫌と言う」とか、 “嫌” という「負」のワードを主語に持ってきて話していた。
「人に嫌がることはしない」は『人が喜ぶことをしたい』とも言えるし、
「嫌なことは嫌と言う」は『好きなことを好きと言う』とも言えると思う。
そうしたポジティブな『正』のワードを彼は選ばない。
その是非を問いたいのでもなくて、ただ、いつもnoteを読んでくれている人なら分かってもらえると思うけれど、私は主語が『正』の人間だ。
それから彼は自分のことを「志が高くない」と言った。
この言葉を訊いてから数週間、なんだか解せない気持ちがあって、その理由が昨夜やっと解けたんだ。
彼のなかで彼自身は志が高くない人間で、起業や作家活動をしている私は志が高い人間に分類されているのだと思う。
そこに来て私は『志なんて高くある必要はないのではないか』と言って、彼はそれに少し驚いた様子だった。
ただ、今思うとこの言葉には少し続きがあって。
志なんて高くある必要はないけれど、人生を楽しもうとする姿勢は必要だと思う。とは思う。
一度きりのこの人生をただの時間の消費で終えるのではなく、 “生命の燃焼” とでも言おうか、そうした前のめりな姿勢は持っていたいと思う。
平たく言うと やりたいことをやる とか 好きなことをする とかね。
それは決して起業をするとか、何者かになるとか、そんな野心的な話だけではない。
ただ毎日をより豊かに、より穏やかに、より心地良く過ごそうとして、
気になるお店に行ってみるとか、カフェで一息ついてみるとか、自分のことをもっと深く知ろうとするとか。
それだって立派な “生命の燃焼” だ。
それが、彼からは感じられない。彼からは “可能性の放棄” を感じる。
彼はまだ出会って間もない時に「建築家になりたくて」と語った。
けれど後に話を訊くと「今のままで良いと思っている」とも言った。
本当に今のままで良いと思っている人間ならば、出会って間もない相手に夢を語るだろうか。
格好付けたのか良い顔をしたかったのか、何か理由はあるのかもしれない。
けれど「語る夢がある」それが彼の本心なんじゃないのか。
しかし、彼が “可能性の放棄” を始めた原因もなんとなくは聞いていて。
時は14歳、高校受験。彼は高専か一般の高校に行くかと悩んだのだと云う。
しかしそれを見た彼のお父さんはこんな言葉を放った。
——— 「 どっちに行っても後悔するよ 」
どっちに行っても楽しめるよとか、そんなポジティブな選択でなくて、後悔することを前提としたその言葉。
可能性と期待に満ちた14歳の少年にそれはどれほどの闇が覆い、光を奪ったのだろうかと思った。
真っ白なキャンバスの前、なんだって描けると彼が握った筆を、お父さんがパキっと折った。
彼が話をしてくれた時、私の頭にはそんな情景が浮かんでいた。
その話をしながらも口角を下げなかった、悲しかったとは言わなかった彼の横顔は、あまりに寂し気で儚く感じられた。
だから、本当は今だって夢を追いたいんじゃないかと思う。
彼は頭が良いから、彼自身も自分には可能性があるって気付いているんだと思う。
けれど頭が良いからこそ色々な事を考えられて、故に臆病で、変化を恐れる人でもあって。
コンビニのご飯でハマったものがあればそればっかり食べてしまうって言うし、服は滅多に買わないし、一年半付き合っている彼女がいるし。
一途だから、環境を変えることには人一倍の抵抗感があるのだと思う。
ここから先は私の傲慢と勝手な期待になるけれど、
彼は私と居たほうが良いと思う。
14歳の時に失わざるを得なかった希望を、私なら取り戻してあげられると思う。
今からだって遅くないってことを、言葉だけでなく行動で示してあげられると思う。
彼の本心を取り戻す為の伴走ができるのは、この世で私しかいないと思う。
「負」で生きる彼と『正』で生きる私が出会い、こうして関わっていられるのはきっと奇跡的なことで、本当に一瞬の出来事だ。
違う車線を走っていた二台の車がたまたまジャンクションで交差して、このまま各々の道に戻ることもできるし、一方に合流することもできるだろう。
だからさ、こっちに来てよ。私と一緒に走ろうよ。
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