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有料マガジン:ニュージーランドでパイロットをしています

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記事一覧

ヒコーキの飛ばし方 PPL LESSON 01

こんにちは、かろうじて飛行士のAshです。 新型コロナウイルスの影響で行動規制が続いています。みなさんいかがお過ごしですか。 私が住むニュージーランドは、4週間のロックダウンを経て、本日(執筆時点:4月27日)の夜中、警戒レベルが4から3に移行します。飛行士の私は、このところ飛ぶ仕事がめっきりなくなってしまいました。 自宅に1ヶ月以上いる中で、ロックダウン中の出来事や自分の考えを30日間毎日更新したり、サークルを作ったりと試行錯誤してきましたが、この度、温めてきた企画で

これからやろうとしていること

こんにちは。かろうじて飛行士のAshです。新型コロナの影響で飛ぶ仕事がめっきり減ってしまいました。時間ができたので、新しいことに挑戦しようと思っています。 現在、私はニュージーランドのエアラインで飛行士をしていますが、エアラインの前は、飛行教官をしていました。自家用操縦士のフライトトレーニングに使ったブリーフィングノートを引っ張り出して、トレーニングの内容をnote記事にしたいと思っています。 どのようなインターフェースにするかはまだ考え中です。具体的な内容は、有料マガジ

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10年目でエアバスに移るキャプテンの話

昨日飛んだキャプテンが、エアバスに移るっていうんで、いつ始まるの、と聞いたらトレーニングが来週に始まるのでこのデューティがラストなんだという。 まじかよ。 彼は相性のいいキャプテンの一人で、ステイ先でも良くビールをおごり合っていた。妹が日本で英語教師をしていたことがあって、日本のことを良く知りたがった。一緒に乗るたびに私のチプカシを見て「なんだそのクールな時計は!レトロだな!」と毎回叫ぶので、日本のアマゾンで20ドルで売っているぞというと「おれの時計もウェアハウスで15ド

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四角い頭を丸くする

前回、エンジン故障時の対処にワタワタしたので、トレーニングマネージャに相談したら「練習する?」というのでどういうことかと聞き返したら、「シミュレータセッション一本ブックしてやるよ」という。会社の金を使って練習させてもらえるなんて思ってもいなかったので、びっくりした。もちろん、二つ返事でお願いした。ここはうちの会社のすごくいいところで、困っている人をちゃんと助けてくれる。会社によっては、チョップチェックというか、まるで落とすためにやってんじゃないか、と思うような試験をやるところ

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ニュージーランドのパイロット像

一年半前にエアラインパイロットとして採用されてからしばらくは、会社のユニフォームを着られることがもう嬉しくて、毎度の仕事の日には帽子を目深にかぶり、手を触れたら切れそうなほどの折り目を付けた制服を着ていったものだ。 黒いスーツケースの上に黒いバッグを乗せ、制服と帽子を着用して、空港を背筋を伸ばして歩いていると、子供はもとより大人でも結構「あ、パイロットだ」と顔に書いてあったりする。他でもない、私がそんな大人だった。パイロット一年生の当時の私が書いたこの記事を見ても、ウッキウ

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脆弱さ対策としてのルール逸脱

「ステライルコクピット」を知っているだろうか。 《sterileは無菌の、の意》航空機が高度約3000メートル以下を飛行する間、客室乗務員からコックピット(操縦室)への連絡を原則として禁止すること。事故の多発する低空域での操縦に集中できるようにするため。 このコトバンクの定義は正しいが、私の日々の実感ではコクピットにいる2名のパイロットが運航に無関係なことをしゃべらないことが、現代のステライルコクピットの理解のされ方だと感じる。つまり、ある高度までは、飛行機を運航するため

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おれはパイロットに向いているのか問題

訓練の進捗がうまく行かなかったり、何かミスを続けてしたりすると、悪魔がささやいてくるものだ。 「おれって、パイロット向いてないのかな。」 誰でも、一度は経験する、のかな?知らんけど、私はずっとそういう感じだった。 向き、不向きとは何か結論から言えば、向き不向きを考えることは、時間の無駄だ。なぜなら、向いているかどうかは、文脈に依存する、極めて主観的であいまいな概念だから。ある価値観のもとでは、高く評価されるものが、別の価値観のもとでは低く評価されることもある。 例を出

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昔の先輩の言が10年経ってやっと響いた話

昔、まだ小型機の訓練を始めるか始めないかのとき、先輩にこんなことを言われたことがある。 「学科の知識っていうのは、フライトのそこ、ここに落ちているから、それを探すように飛ぶんだよ」 その時は、ふーん、そんなものか。程度の認識だったが、今、実際にエアラインパイロットになってみて、10年近く前のこの先輩の言葉が、実はものすごく核心をついたものだわかる。昔ひとから言われた何気ない一言が、時間が経ったあとで振り返ってみると、そういうことだったのか!と合点がいく経験は誰にでもあると

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専門職=タイムマシン説

先日、ある弁護士がテレビの生放送中にこんなことを言う場面を見た。 「その発言は、放送法違反なので謝ったほうがいいです。」 その弁護士は、隣に座るキャスターが暴言ともとれる発言をしたことをその場でたしなめたのだが、私はこれをみたときに、あぁ、この人はプロの弁護士なんだなと感じたのだった。 なぜ私がそう感じたのかというと、その人が「その場で、直ちに」指摘をしたからだ。 今、となりの人から出た発言が、遠い昔に机の上で勉強した「放送法」に違反するとその場で、すぐにわかること、

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選択的注意の罠

次の動画を2分ほど見てほしい。真ん中の赤いカップにチョコレートが隠され、シャッフルされる。動画の最後で、どのカップにチョコレートがあるかを聞かれるので、答えてみよう。動画は、途中再生される。3:00ごろまで見れば十分だ。 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ どうだろうか。質問の全てにYESと答えられただろうか。 選択的注意の罠動画にあるように、人は、バイアスにはまると、全体が見えなくなる。アヒルは見えても、5本目の手やカップの

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シミュレータチェックと恥の多い人生

今回は、そこそこうまくいくと思っていた。 通算で4回目となるOCA(Operacional Compitency Assessment 定期審査)だ。FOとして通常の業務をこなし、シムの勘所も、準備の仕方も、心構えも、だんだんとわかってきた。そうそう悪いことにはならないだろうと思ったのだ。 パイロットがやっているブログの中でも、自分の失敗談を具体的に書いているのは私くらいなものだろう。なにしろ、あまりあけすけにするとキャリアに響く可能性がある。笑 でも、私が曲がりなりにも

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テストで緊張しないための考え方

明日はシミュレータチェックがあるが、こんなところで字を書いている。 フライト中、よくキャプテンに 「シミュレータチェックには、どんな準備をしているの?」 と聞くのだが、答えには大きく分けて二つの傾向がある。 準備する派6か月ごとに義務付けられているシミュレータチェックは、約一か月前に日取りがきまり、ロスター(スケジュール表)に割り当てられる。 一緒にチェックを受けるキャプテンは、普通のフライトと同じようにランダムに割り当てられる。通常のフライトと違うのは、同じベース

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キャプテンの経験とFOの意地

短く、特に問題ないルートのはずだった。 敬語が邪魔になる場合近いので、巡航高度は12000ftと低めだ。 離陸して、低層の雲を抜けて上昇していると、目の前に層積雲。割と揺れそうな感じ。しばらく考えて、 「Request Flight level 160」 とキャプテンにオーダー。PMのキャプテンがそれをATCに伝える。雲の上を飛ぶために16000ftまで上昇することにしたのだった。最近は、意識してわざとPleaseやDo you mind~、If you are ha

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Review:機長はつらいよ

Command Praticeのつもりで早めにShow Upして、天気と燃料を見ていた。 SIGMETからエンルートのシビアアイシング(8000ft - FL190)が今日のテーマになるかと考えた。NOTAMとRAIMをチェックしたところでキャプテン登場。 フライトプランニング: 横風制限エンルートのシビアアイシングに気を付けようとキャプテンに伝えたが、怪訝な表情。「Could be Sky Clear じゃね?」と。それよりも、ハミルトンの風がやばいな、とのこと。見てみ

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