世界中からの若者たちが学ぶ寄宿舎制工芸学校にて スウェーデン個展の旅 8
織物、木工、絵画、服飾、鉄細工の
いずれかを専攻する若者達が、
寄宿しながら基礎から学ぶ工芸学校です。
広々とした丘の上に建つここに
約80人ほどの学生が学んでいます。
今夜は持って行った和筆の数だけの生徒に、
デザイン授業でした。
どの科目を専攻していても
基礎には形や色彩感覚が必要です。
私の授業は、
和筆と墨でまず基本的な筆使いと
墨の性質を教えます。
それから
黒い墨と墨の間に見え隠れする色彩を見つける、
あるいはイメージする訓練です。
初めは何が何だか分からず、と言っていた生徒は、
自由課題で描く場になると、
もう私の言葉も耳に届かず、
彼らは夢中になって描き続けました。
時間が過ぎて、
終わりますよと言っても駄目で1時間過ぎて、
口々に
楽しかった、こんなの初めて、
ありがとう
そして固まった心に空気が流れるみたいと、
人の作品は眼中になく
自分で描いたデザインに惚れ惚れする学生たち。
戦時下にある重苦しいヨーロッパの片隅で、
アーティストを目指す彼らは、
これからどう生きて行こうとしているのか、
とにかく技術を身に付け、
少しでも自立の道、
そして少しでも心豊かになりたいと
模索している若者たちです。
彼らの笑顔は私には救われる思いでした。
どんな技術を学んでも、
個性を表現する力を身につけること、
一番難しい自分の感情表現の力を得て、
技術を学んで欲しいと願います。
たったその一部のデザインと色彩を知る授業は、
彼らにとって必要なものだと念を押して、
筆を置きたくない若者達と別れを告げました。
今度はいつかここを卒業し、
国に帰ってアーティストになって、
物作りの中でしあわせでいて欲しいと
思わずにはいられませんでした。
生き抜くことが、
世界中の若者たちに難しくなっています。
引きこもりはここでも多く、
日本語でも通用するHikikomori
アートが
家から外の世界に誘うものに
なってくれますように。