マガジンのカバー画像

28
紡いだことばたち。
運営しているクリエイター

#夜

詩 16

−しあわせのうしろ髪を、私はそっと撫でたのでした−

とっぷりと、甘く熟れた夕暮れに

遠くから、夜が呼ぶ

やおく、甘やかに

いつの間にかそこここに

金平糖を張り付けて

音の束がちりちりと、耳の奥を擽る

酸素は濃く

すっぽりとおさまっていく

すべてが、あるべきところに

もう一ミリも、動いてゆかない

ここにいま、あとひとつだけ必要なのは
#詩 #夜 #夕暮れ

詩 13

思考が羽音を響かせながら
渇いた部屋を飛びまわる
何も持たずにただ
眠りの底につきたいのに

ぽっかり空いた
夜と朝のすき間

暗い廊下は長すぎて
どこまでも吸い込まれていくような

感覚

どこまでも どこまでも どこまでも どこまでも

思考の羽音がぶんぶんと
耳の奥に纏わりつく
払いのける手は痺れて重く
諦めた私は
朝が来るのを ただ待っている

喉の渇きを潤すことも

もっとみる

詩 11

シンクには
数日前の紅茶のカップ
干からびて 底にへばりついた檸檬
数日前の それは 私

夜の端をつかまえて
縫い閉じようとする
決してもう、開かないように
クローバーの針と、透明な糸

部屋全体が脈打って
濃いにおいを撒き散らす

眩暈

窓の外には、星
夜の底にへばりついて
そのまま干からびた私は
薄く目をあけて

とうの昔に死んだ
星のひかりを

みている

詩 6

かなしいいろの空の下

子どもたちが

影踏みに興じている

もうずっと

どのくらい前からか

あっちとこっちの区別もつかず

歓声をあげながら

私は黙って

ベランダから見ている

部屋の温度は上がらずに

影がゆらゆらゆれている

かなしいいろの空の下

子どもたちの輪郭だけやけに明るく

愛でればよいのか

羨めばよいのか

わからないので

私は黙って

ベランダから見ている

紅茶の

もっとみる